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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第18章 旅路編

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再会と、旅路の交差点

 ギルド本部の会議室は、朝の日差しが大きな窓から差し込み、温かい光に包まれていた。


 サティたちは、影の核問題について詳細な報告書を提出したのち、休息のための滞在許可を得た。


 その直後だった───


「ようやく会えたな、サティ」


 低く、どこか懐かしい声が、会議室の扉の外から響いた。


 開いた扉の向こうにいたのは、長身の男───レン。


 その背後には、紅の外套を翻すリリィと、いつも無言で付き従うシュヴァルツの姿もあった。


「レン……」


 サティの瞳が、わずかに潤む。


 彼女は静かに歩み寄り、

 そして──レンの胸元に、そっと額を預けた。


「……無事で、よかった」


「ああ。お前もな」


 たったそれだけのやり取りだったが、言葉以上に多くの想いが伝わっていた。



***


 応接用のテーブルを囲み、久々の合流を喜ぶ空気が流れる。


「影の核を、本当に壊したのか?」


「ええ。擬似核も守護体も、完全に消滅したわ」


 サティがそう言うと、レンがわずかに目を伏せた。


「そうか……。これで“例の一帯”も落ち着くだろうな」


 彼が言う“例の一帯”とは、かつて複数の国が領有権を主張していた影被害地帯のことだ。


 核が破壊されたことで、あの地に関わる“争いの火種”も消える。


「私たちも、いろいろ見て回ってたんだよ」


 リリィが笑みを浮かべて言う。


「パステコ公国では影の汚染地帯が急速に浄化されて、みんな驚いてた。サティの仕業だって噂されてたわよ?」


「ふふ……まあ、否定はしないわ」



***


 一通りの報告と雑談を終えたあと、レンがふと神妙な顔になる。


「……それで、お前たちはこれからどうする?」


 サティは答えず、ルリとミカ、そしてレオの顔を一人ずつ見る。


 誰も言葉を発しなかったが──その目に、迷いはなかった。


「旅は……続けるわ」


 静かに、しかし力強く言ったサティの言葉に、レンも目を細めた。


「そうだと思った。お前は、まだ“何か”を追っている目をしてる」


 レンの言葉に、ミカが少し表情を曇らせた。


「……“影の核”が全ての元凶だったはずじゃ……?」


「たぶんね。けれど、“核が砕けたのに、なお残る気配”があった」


 サティがそう言った瞬間、室内の空気がわずかに揺れたような気がした。


「つまり……終わりじゃなかったってこと?」


「完全な終わりには、まだ遠いのかもしれないわ。

 “影”を欲した誰かの意志は───まだ、どこかに生きている気がする」



***


 沈黙が落ちる。


 その中で、レンが立ち上がった。


「だったら、おれたちも動くさ」


「え……?」


「別々の道を行くとしても、“同じ敵”に向かう限り、また必ず交わる」


 リリィも立ち上がり、にっこりと笑った。


「一緒に旅はしないけど、またどこかで会える。そういう仲間って、いいと思わない?」


 サティもゆっくりと立ち上がった。


「ええ、そうね。だから───そのときまで」


 再び、それぞれの旅が始まる。


 核の終わりは、終章ではなかった。新章の“始まり”だったのだ。

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