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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第18章 旅路編

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禁じられた扉、目覚めの刻

 霧の谷を越えたその先――切り立った断崖の中腹に、ぽっかりと口を開ける洞穴があった。


 そこには、岩と一体化したような重厚な扉が埋まっていた。


 サティはその扉の前に立ち、祠で手に入れた鍵を差し込む。


 カチリ、と硬い音。


 直後、扉全体が低く唸るように振動し、左右にゆっくりと開いていった。


 中から吹き出したのは、空気ではなかった。


 **影の匂いを含んだ、“魔力の気流”**だ。


「……ここが、影を創り出した場所」


 ルリがごくりと喉を鳴らす。


「戻るなら今よ」


 サティが静かに言うと、誰も返事をしなかった。


 代わりに、三人とも無言で前を見据えている。


 ――誰も、引き返す気などなかった。


 薄暗い通路を進むと、足音が反響する。


 壁には古びた魔術式が浮かび、ところどころに“生体実験”を思わせる痕跡が残っていた。


「これは……人間の、魔力回路の断片?」


 レオが立ち止まり、壁に刻まれた術式を見つめる。


「“影”を創るために、人体を核に使った……?」


「狂ってる……」


 ミカが吐き捨てるように言った。


 だが、もっと狂っていたのは――

 その先に現れた、中央ホールの光景だった。


 ドーム状の空間。その中心に、

 巨大な水晶柱がそびえ立っている。


 それは“核”と呼ぶには不完全だが、確かに鼓動していた。


「……擬似核ぎじかく


 サティが呟く。


「これが……“自分たちで創り出した影”の源?」


 だが次の瞬間――水晶柱が脈動を強めた。


 キィィィイイイィィィィィ……!


 耳障りな音とともに、影の波がドーム内を満たしていく。


「……来るぞ!」


 レオが叫ぶと同時に、影の形が姿を変える。


 かつて人間だった名残をとどめながらも、全身を黒い霧と瘴気に包んだ異形が立ち上がった。


 ――“擬似核の守護体ガーディアン”。


 影の実験体。それは言葉を持たず、ただ殺意と魔力の奔流だけで、彼らに向かってきた。


「全員、位置取って!」


 サティが号令をかけ、四人が散開する。


 ルリは地を滑るように接近し、剣を振るう。


 だが刃は浅く、それだけでは通じない。


「硬いっ……!」


「魔力の防壁をまとってる。物理攻撃だけじゃ崩せない!」


 レオが即座に判断し、詠唱を始める。


「――《雷槍・三連トライ・ヴォルト》!」


 雷の槍が空間を貫き、ガーディアンの肩口を撃ち抜いた。


 断末魔のような唸り声とともに、影の瘴気が渦巻く。


「この守護体、核の瘴気を吸収して再生してる……!?」


 ミカの声に、サティは冷静に呼応した。


「なら、回復させないよう、攻撃の手を止めないで!」


 風刃を纏ったサティが、正面から魔力ごと斬り込む。


 影の身体が裂け、瘴気がぶわっと散る。


「今よ!」


 ルリが続けざまに剣を深く突き刺し、ミカが影の裏手から短剣を振るう。


 その瞬間、レオの魔術が完成した。


「――《重雷陣・崩》(じゅうらいじん・ほう)ッ!!」


 空間に現れた魔法陣から放たれた雷が、影の擬似核本体に直撃する。


 ガガガガガッ……!!


 光と闇がぶつかり合い、影の咆哮が響き渡る。


 そしてついに――


 影の守護体は、断末魔のように叫びながら、砕けた。


 黒い霧が残滓となって、ホールの床に崩れ落ちる。


 静寂が戻った。



***


 サティたちはしばらくその場から動けず、ただ核の柱を見つめていた。


「……まだ、これが終わりじゃない」


 サティが言った。


「この核そのものを、消滅させないと。“影”はまた蘇るわ」


 レオが頷く。


「なら、次が本当の決着だ」

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