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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第18章 旅路編

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道の先にて、風は止まぬ

 朝霧が宿の縁側にうっすらと流れ込んでいた。


 ユグノの朝は静かで、どこか神聖な気配すら漂っている。


 朝食を済ませたサティとルリは、荷を整えて宿を後にするところだった。


「……いい温泉だったね」


「ええ。肌の感触が違うわ。あなたも、髪がふわふわになってる」


「えっ……そう? へへへ……」


 そんな軽口を交わす背後から、聞き慣れた声が届く。


「もう出発かい? どうやら、出発のタイミングが一緒になったようだね」


 レオとミカだった。


 二人もまた、昨日よりも少し落ち着いた雰囲気で荷物を背負っている。ミカの足の包帯も、新しいものに巻き替えられていた。


「ルメリア方面……という話だったわね。山を抜けて南下するなら、道はしばらく同じになるわ」


 サティがそう言うと、レオが手を広げて応じた。


「それなら、しばらくご一緒しても? 安心感があるよ、君たちと一緒なら」


「……気を引き締めて」


 ルリが小声でサティに囁いた。


「ええ。油断はしない」


 サティは目だけで頷く。


 こうして、二組の旅人たちは再び歩き始めた。


 ユグノを後にして南下する山道は、やがて開けた丘へと繋がっていく。


 昼を過ぎ、森の中を抜けようとしたそのときだった。


「……風が、止んだ?」


 ルリが立ち止まり、辺りの空気を感じ取る。


 風の匂いがない。草木のそよぎも、鳥の声もない。


 不自然な沈黙。


 サティもまた、空を見上げた。太陽は出ているのに、どこか“光が鈍い”。


「魔力が……乱れている?」


 彼女がそう呟いた瞬間、道の先の森に、黒い影がゆっくりと立ち現れる。


 それは、人の形をしていた。だが、輪郭は歪んでいて、顔は仮面のように白い。


「影……!」


 サティは即座に前へ出る。


「ミカ、後ろに!」


 レオが叫ぶ。ミカはすぐに後退しながら、短剣を抜く。


 影は何も語らず、ただ静かに腕を上げ――黒い槍を具現化した。


「来るわ!」


 サティは前方に展開して、風の魔力を一閃!


 その瞬間、影の身体が霧のように霧散し、槍だけが地面に突き刺さった。


 ……だが、その“消え方”が、どこか異様だった。


「倒した、というより……“消された”?」


 レオがぽつりと呟く。サティもまた、眉をひそめる。


「この“気配”、以前にも……。いや、それ以上に、何かがおかしい」


 その場に残された黒い槍は、地面に突き立ったまま、不気味に震えていた。

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