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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第18章 旅路編

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15万文字記念SS「その一杯に、想いを込めて」

ルメリアのギルド本部。夕暮れの喧騒が少し落ち着いたそのとき、一杯の紅茶が湯気を立てていた。


「……おかえり、サティ」


誰もいないカウンター席に向かって、セレナはそっと呟いた。


彼女の目の前には、サティがいつも使っていたマグカップ。もう彼女はいないというのに、つい用意してしまう。


「まったく、あの子……あれだけ無茶しておいて、今度は旅だなんて」


声には呆れが混じっていたが、その頬はどこか緩んでいる。


ふと、カップの傍に置かれた一通の手紙に目をやる。


そこには、達筆とは言い難いが、しっかりとした文字でこう書かれていた。


> 「ルリと、少し遠くまで行ってきます。

たぶん私は、誰かの隣にいるほうが強くなれるみたい。

……でも戻ってきたら、紅茶の味、覚えてるかな?」




セレナはくすっと笑った。


「……覚えてなくても、また教えてやるわよ」


カウンターの隅、スタッフ専用掲示板には、小さな手描きのカードが貼ってある。


【サティさん、ルリさん、いってらっしゃい! また会える日まで】


ギルドの仲間たちが寄せ書きしたその紙には、皆の温かい言葉があふれていた。


窓の外、茜色の空を見上げながら、セレナはもう一口、紅茶を啜る。


その味は、少しだけ優しかった。



***


「……さあ、仕事に戻ろうか。旅立った子に、恥ずかしくないようにね」


そう言ってセレナが席を立つと、風が一枚の紙をさらっていった。


それは、サティが旅立ちの前にそっと残した、ギルドへの“報告書”。


【件名:新たなる任務開始】

【目的地:パステコ公国】

【同行者:ルリ・クレイン】


最後にこう記されていた。


> ──愛すべき日常に、必ず戻ることを誓います。

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