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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第16章 休暇旅行編

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風の神殿を越えて ― 帰還

──風の神殿・外縁の森。


早朝の光が森を照らし、露を含んだ木々がきらきらと輝いていた。


神殿から歩き出したサティとルリは、風の匂いが変わったことを肌で感じていた。


「……空気、軽くなったね」

ルリが、荷物を担ぎ直しながらふと呟く。


「風が、優しくなった。ラーナが……最後まで見守ってくれてたのかもしれない」

サティもまた、胸元に宿った風霊の気配にそっと触れた。


***


──三日後、ルメリア・冒険者ギルド。


「……以上が、風の神殿での出来事です。風巫女ラーナの記憶、そして“風災”の封印も、完了しました」


サティは執務室で報告書を置くと、深く息を吐いた。

目の前にいるのは、ルメリアのギルドマスター・グレンと、元上司のリズ・ローレル。


「……また一歩、あんたが遠くへ行った気がするわね」


リズがそう呟いたとき、グレンは静かに目を細めた。


「サティ。貴方の力は、もう“ただの受付嬢”のものじゃない。……だが、だからこそ聞かせてほしい。これから、どうしたい?」


その問いに、サティはしばらく沈黙した。そして──


「旅に、出ようと思っています」


ルリが、はっと顔を上げた。


「……風巫女の力は、ラーナから“受け取った”だけでは不完全なんです。それを“自分のもの”にするには、もっと世界を知る必要がある。風と、人と、過去と、未来と──全部を自分の中で見つめ直したい」


「……ふぅん。言うようになったわね」


リズは少し寂しげに笑い、そして書類に印を押した。


「許可するわ。ちゃんと旅先から報告書、月に一回は送りなさいよ?」


「ありがとうございます」


「……それと」


グレンが、静かに付け加えた。


「“旅”というのは戦いに疲れた者がすることです。無理をしないように、サティ。風は、お前が立ち止まっても、ちゃんと吹いてくれる」


サティは少し驚いて、そして微笑んだ。


「……はい。ありがとうございます、ギルドマスター」


***


──その夜。


ルメリアの屋敷に戻ったサティとルリは、荷物を広げながらこれからの話をしていた。


「本当に……旅に出るんだね」


ルリはサティの隣に座り、窓の外に広がる夜空を見上げた。


「ルリ、来てくれる?」


「うん、行くよ。むしろ私、ひとりで置いてかれるかと思って焦った」


二人でくすくすと笑い合う。


「じゃあ、まずは……観光から始めよっか。ゆっくり、私たちの“風”を見つけに行く旅に」


ルリは大きく伸びをして、ふふんと胸を張った。


「よーし、温泉行こ。名物行こ。珍しい遺跡とかも全部回っちゃお!」


「はいはい、張り切りすぎて風邪ひかないでね」


──こうして、風を継いだ少女は、

“自分の風”を見つけるための小さな旅へと歩き出す。


それはきっと、誰かの記憶ではない、“自分の物語”の始まりだった。


(つづく)

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