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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第16章 休暇旅行編

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風巫女の記憶③

──風の神殿・試練の間──


「サティ、後ろ!」


ルリの叫びと同時に、神殿の奥から吹き抜けるような突風が走る。目に見えない刃のような風が石畳を切り裂き、空間そのものが軋んだ。サティは即座に後方へ跳び、ローブの裾を翻して魔力障壁を展開する。


「……やっぱり、ただの神殿じゃなかったか」


風の神殿。ここは古代に“風巫女”と呼ばれた巫女が神託を受けたとされる場所。そして今、サティたちが足を踏み入れた試練の間は、まさにその巫女の“記憶”が封じられている空間だった。


「見て。床の紋章が、光ってる……!」


中央の魔法陣が脈動し始め、まるで心臓の鼓動のように神殿内に魔力が響く。やがてそこから現れたのは──風でできた少女だった。


「記憶の守護者……!」


サティは目を見開いた。風の精霊ではない。だがそれに近い存在。無機質でありながら、どこか人間の少女の姿を模している。


「汝ら、風の記憶に触れようとする者か……」


少女の声が神殿内に反響する。それは風そのものが語りかけてくるような、透明で澄んだ声だった。


「私は風巫女・ラーナの記憶の守護者。選ばれし者でなければ、記憶を覗くことは許されぬ」


「選ばれし者って……私たちは風巫女の意志に導かれてここに来たのよ!」


ルリが叫ぶが、少女は動じない。むしろ彼女の両手に集う風の刃が鋭さを増していく。


「ならば示せ。お前たちが、風を受け入れ、風とともに歩む者であることを──」


空気が震えた。刹那、少女の姿が消える。そして次の瞬間──サティの目前に出現し、鋭い風の一閃が襲いかかる。


「……ふっ!」


サティは一歩踏み込み、風を斬るように手をかざすと、無音の術式を紡ぎ出した。彼女が呼び出したのは、彼女自身の“風の加護”。


「──《風律・斥陣》」


術式が炸裂し、空間に流れる風の流れが反転。少女の一撃を相殺する。


「今の……!」


「風の流れを、逆手に取ったのよ」


にやりと笑うサティ。だが、まだ試練は終わらない。


少女は空へと舞い上がる。彼女の背中から、純粋な風の翼が現れる。その姿は、かつて風巫女と呼ばれた者たちが纏ったという“神気”そのものだった。


「……第二段階、か。ルリ、連携を取るわよ」


「了解!」


ルリは背後から支援魔法を展開し、サティの魔力を増幅させる。風の渦巻く空間の中、彼女たちはただ記憶へと至るため、目の前の“守護者”に挑む。


風が叫び、魔法が火花を散らし、記憶の封印が少しずつ解かれていく。


──そして、戦いの果てに彼女たちが辿り着いたのは。


「……これが、“風巫女・ラーナ”の記憶──?」


目の前に浮かぶ記憶の断片。そこには、サティに似た銀髪の少女が、風に祈りを捧げる姿があった。


「……あなたも、誰かを守るために、戦ってたんだね」


サティの手が、風の記憶に触れる。


瞬間、彼女の中に新たな力と想いが流れ込んできた。


それはかつて、風とともに在った巫女の祈り。


そしてその最後の言葉は──


『風が、あなたを導きますように』

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