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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第1章 死神編

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来襲!総督のハイド

「──《死神》の居場所が判明したというのは、本当ですか?」


ギルドの会議室。

空気が凍りつくような質問を投げかけたのは、《白金の盾》のジェイルだった。


「……ああ」


短く頷いたのは、ギルド総督・ハイド。

テーブルに肘をつき、厳めしい顔のまま視線を下げている。


「イクールカウンターに入っていくのを、見た者がいる」


「……しかし、変装していた可能性は?」


「その必要はないだろう。あそこは“冒険者ギルド”だぞ?」


その一言で、ジェイルは合点がいった。


《死神》が変装のスキルを使う理由は、主に戦場や外部での身分隠しだ。ギルド内部で正体を隠す必要はない――自らが“職員”なのだから。


「……納得しました。でも、他の者たちはまだ疑っているようです」


「当然だ。今まで《死神》の顔を見た者など誰一人いない。『居場所が分かった』などと唐突に言われても、すぐには信じられんだろうな」


そう言って、ハイドは口角をわずかに上げた。


「実は、君たちにまだ話していなかったことがある」


「……なんです?」


会議室にいた全員の視線が、自然とハイドに集まる。


「君たちが潜入していたあのダンジョン──実は、別の人間にも監視を命じていた」


「!?」


「……それは本当ですか?」


「ああ。本当だとも。そしてその者からの報告で、ようやく《死神》の“正体”が見えた」


「なら、早く教えてください!」


ジェイルが身を乗り出して問う。

だが、ハイドは微笑みすら見せず、静かに言った。


「まずは、私が本人に会う。話はそれからだ」


「……分かりました」


* * *


翌日──


「先輩!今夜、ディナーに行きませんか?」


昼下がり、ギルドカウンターで書類整理をしていたサティは、後輩ルリの声に顔を上げた。


「ディナー? ……仕事があるでしょ?」


「期間限定で、“トロピカルクレープ”ってのが出てるんですよ!めちゃくちゃおいしいらしくて!」


嬉々として話すルリの姿に、思わず笑みが漏れる。


「……そんなのに釣られるなんて、ほんとあなたらしいわね」


そんな何気ない日常が、突如として騒がしいざわめきによって打ち破られた。


「おい、見ろよ!」


「なんであの人がこの支部に!?」


ザワッとギルド全体が動揺する。


サティも思わず顔を上げた。

目に飛び込んできたのは、黒と金の装束に身を包んだ──ギルド総督・ハイド。


「なっ……!」


「総督様! 何かご用件でしょうか!」


支部マスターが慌てて出迎えるが、ハイドは静かに手を振る。


「私に構わず、仕事に戻れ」


「は、はっ!」


緊張の空気の中、サティの足元から冷たい汗が流れる。


(……なんで、こいつがここに?)


(私の正体が……バレた?)


(バレたとしたら……いつ? どこで? どうして!?)


動揺を隠そうと必死に顔を保つ彼女の前に、ハイドが静かに歩み寄ってきた。


「嬢ちゃん、仕事は大丈夫か?」


「は、はい……だいじょうぶ、です」


声が震えるのを抑えきれない。ハイドは一歩踏み込む。


「顔色が悪いが……体調がすぐれないか?」


「い、いえ……大丈夫です……っ」


(慌てない。冷静に……私はただの“受付嬢”。いつも通りでいればいい)


「何か……御用でしょうか?」


サティが努めて自然に声を出すと、ハイドは目を細めた。


「上手く隠してるつもりのようだが……俺には通用しないぞ」


低い声。その瞬間、サティの背筋を冷たいものが走る。


「……明日。冒険者ギルド本部に来い」


短く告げて、ハイドは何も言わず踵を返す。支部内の職員たちに一礼しながら、堂々と去っていった。


その背中を見送りながら──サティ・フライデーは凍りついていた。


(……私、バレたの?)


(それとも……ただの駆け引き?)


(明日、何を聞かれるの? 私は……どうするべき?)


「……冒険者ギルド総督ハイドか」


名を呟き、サティは深く息を吐いた。

仮面を脱がされるその日が、ついに訪れようとしていた。

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