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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第15章 セレナ再会編

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魔国再訪 ― 静かなる再会の予兆

空は鈍色。


砂の舞う風が、あの地の空気に変わったことを告げていた。


「まもなく、魔国国境です」

従者の声が馬車の外から届く。


私はうなずき、ブーツの甲に付いた砂を指で軽く払った。


ここは――魔国〈ヴァラメディア〉。


数ヶ月前、私たちが“封印の協定”を結んだ土地。その時、私は“彼女”と向き合った。


セレナ・アゼレイド。


魔王の側近にして、魔族の中でも最も理知的で冷酷と噂される一人。


だが私は知っている。彼女が何を背負い、何を守っていたのかを。


「通行証明、確認しました。どうぞお通りください」

魔国の門兵がぬかりなく目を通し、私の目を一瞬見て、少しだけ表情を緩めた。


かつて剣を交えた相手の“顔”は、覚えているということだろう。


私は軽く一礼し、門をくぐった。



魔都《メア=ザラル》。


闇の都と称されるその地は、以前訪れたときよりも、どこか落ち着いていた。

無秩序だった露店に規律が生まれ、通りには魔導結晶の街灯が立ち、子どもたちの笑い声さえ聞こえる。


「ずいぶんと変わったわね……」


魔族と人族――かつては相容れぬ存在だった。

けれど、互いに痛みと喪失を知ったからこそ、変化は生まれたのかもしれない。


私は、魔王城へと足を運んだ。

謁見の予定はあくまで「魔国との研究協力に関する再協定」について――


だが本当の目的は、もうひとつ。


“彼女”に、会いに来た。



「ご足労、感謝する。ルメリアの賢女よ」


玉座に座るのは、魔王リリアナ。


その鋭い眼差しは私を測るようでいて、どこか興味深そうでもあった。


「研究協定の更新は問題ない。だが……それだけが、来訪の理由ではあるまい?」


「……さすがね。実は、個人的に会いたい者がいるの。

セレナ=アゼレイド。今は、あなたの参謀だったかしら?」


「……ふむ」


魔王は小さく笑った。


その笑みに込められた意味は、私には読み取れない。


「セレナは、今は前線の南塔に詰めている。だが……伝えれば、すぐに帰還するだろう」


「いえ。知らせなくていいわ。

私が直接、会いに行くから。――できれば、“あの場所”で」


「“黒の水鏡”か。懐かしい名だな。……あの場所に向かうこと、彼女も察するだろう」


「ありがとう、魔王陛下」


私は静かに一礼し、玉座の間を後にした。


セレナがいるなら、もう一度話がしたい。


影との戦いを終えた今、心の中に残ったものを――彼女と確かめたかった。


そして私は、夕暮れの風の中、あの水辺へ向かう。


セレナと出会った、あの静かな湖へ。

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