表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第14章 古代遺跡編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

110/265

鍵と器と、目覚めの祭壇

魔物が消えた後の遺跡は、嘘のように静かだった。


けれどその静けさは、戦闘前のそれとはまるで違っていた。


「……ルリ、大丈夫?」


私は彼女の肩に手を置いた。


ルリは息を整えながら、うっすらと汗を浮かべ、眉をひそめていた。


「……ごめんなさい。体が勝手に……呪文も、口が勝手に動いてたの」


「それ、さっきの……封印呪文の一部かもしれない」


フィーネが壁に刻まれた文字を指差した。そこには、ルリの口にしたものと酷似した文言が、古代語で彫られていた。


「あなた……まさか、本当に“鍵”なの?」


私が問うと、ルリは目を伏せたまま、かすかに首を横に振った。


「わからない。でも……感じるの。この遺跡の奥に、私がずっと“閉じ込めていた何か”がいる。

それが、少しずつ……目を覚まそうとしてるの」


彼女の声は震えていた。


(もしかして……彼女の中には、“器”としての機能が――?)


私たちはさらに奥へ進んだ。


細い通路を抜けると、巨大な地下空間が広がっていた。


天井には星を模したような装飾が施され、中央には高さ二メートルほどの“石棺”が浮かんでいる。


「……これは……封印器?」


魔導士の一人が呟いた。


その石棺に刻まれていたのは、女王と巫女、そして“器”の記録。

その巫女の姿――それは、ルリによく似ていた。


「似てる……あれ、私……?」


ルリが一歩近づいた瞬間、石棺が共鳴し、淡い光を放った。


同時に、空間全体が震え、警告音のような響きが広がる。


「反応した……!」


「戻って! 今すぐ封印術式を――」


「だめっ!」


ルリが叫んだ。


その声とともに、彼女の体が再び淡い光を放ち始める。


髪がふわりと揺れ、瞳が完全に紫色に染まる。


「この中には、“私”の半分がいる……! 私が封じた、もう一人の私――!」


「もう一人の……?」


「私が、私であるために、閉じ込めた過去―!」


言葉にならない魔力が渦を巻き、空間が歪む。

その中心にいるのは、ルリ。


まるで石棺と一体化するかのように、彼女は光に包まれていく。


私は――すぐに決断した。


「ルリ! 手を伸ばして!」


私は駆け寄り、その手を掴んだ。


彼女の体は燃えるように熱く、魔力が直接肌に突き刺さるような感覚だった。


「置いていかないって言ったでしょ! だから……絶対に、戻ってきなさい!」


「サティさん……!」


次の瞬間、空間全体が白く染まり、私たちは――過去の記憶へと“落ちた”。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ