表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第14章 古代遺跡編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

108/264

沈黙の回廊、失われた壁画

石の階段をゆっくりと降りていくたびに、空気が少しずつ変わっていく。


肌に纏わりつくような冷気と、湿り気を帯びた魔素の匂い――これは、長い時間密閉されていた空間が持つ特有の“重さ”。


サティは先頭に立ち、足元の魔力探知石を照らしながら、慎重に進む。


後ろに続くルリ、ルア、そして数人の調査班。誰一人、無駄口を叩かない。それだけ、この場所に漂う“異様さ”が全員の肌に染み込んでいた。


「……この壁、一部だけ新しい?」


ルアの声に、サティは足を止めた。


懐中の魔法灯を掲げると、石壁には無数の文字と線刻が広がっていた。


それはまるで“絵巻”のように、右から左へ、物語を綴るように続いている。


「これは……戦争の記録?」


「違うわ」

サティがゆっくり首を振る。


「封印。……太陽を喰らった存在を、女王とその眷属が封じるための儀式。

この女王……中央に描かれている人物が、鍵」


描かれていたのは、王冠を戴いた女性。両手を広げ、何か黒い影を包み込むように抱いている。


その黒い影は、触手のようなものを伸ばし、空を食らい、星々を引き裂いていた。


「これ、どこかで見たような……」


ルリがぽつりと呟いた。


「……夢の中、かも」


サティが横目でルリを見ると、彼女は額を押さえていた。顔色がほんの少し悪い。


「平気?」


「……はい。ただ、ちょっと気分が……」


(やはり、何か共鳴してる?)


サティは言葉にはせず、ただ静かに頷いた。


さらに奥へと進むと、回廊は左右に枝分かれし始めた。


空気が異様に冷たくなり、吐く息が白く凍る。


「魔力の流れが……この先の“部屋”に集中してる」


フィーネが地図と魔力計を見比べて言った。


やがて辿り着いたのは、広大な円形の空間。

ドーム状の天井は高く、中央には奇妙な“祭壇”のような構造物があった。


「……これは?」


サティが近づこうとしたそのとき――


「……ふたり……また……会えるなんて」


――女の声が、頭の中に響いた。


サティが息を飲む。

ルリが、その場で崩れるように膝をついた。


「……だれ……いま……誰か……が……」


サティは咄嗟に彼女の肩を支えた。


ルリの瞳は、虚空の一点を見つめて揺れている。


「サティさん……ここ、私……知ってる。

この祭壇……私、“ここで誰かを閉じ込めた”……そんな気が、するの」


言葉の意味を理解するより先に、サティの背中に、冷たい汗が走る。


(……記憶の断片? いいえ、それだけじゃない)


どこかで“眠っていた何か”が、確かに今、目覚めかけている――。


そんな予感が、確信に変わりつつあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ