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ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜  作者: 柴咲心桜
第13章 ギルド動乱編

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王都からの手紙

 魔国から帰還して、ちょうど一週間が経った。


 激動の旅だった。けれど、今は穏やかな日常が戻りつつある。


 私はルメリアの領主としての職務と、ギルド受付嬢としての業務をこなし、日々を過ごしている。フィーネとルアも学院で教鞭をとりながら、それぞれの役割を果たしてくれていた。


 屋敷へ戻ると、いつものようにマインが出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ、ご主人様。今日もお疲れ様です」


「ありがとう。何か変わったことはなかった?」


「はい、特には。ただ――王都の冒険者ギルドから、お手紙が届いております」


 そう言って差し出された一通の白い封筒。簡素なそれは、逆に不吉な予感を漂わせていた。


「……見てみるわね」


 私は封筒を持って執務室へと向かい、静かに封を切る。


(嫌な予感しかしない……)


 そう思いながら中の手紙を広げた。



***


《死神》サティ・フライデー殿


元気にしているか?

至急、話さなければならないことがある。

この手紙を読んだら、すぐに王都まで来てくれ。


王都冒険者ギルドにて待っている。


──総督 ハイド



***


「すぐに……行かないと、いけないわね」


 けれど、窓の外を見ると日は既に落ちていた。


 いくらハイドでも、夜中に駆けつけるような無茶は言わないだろう。


「明日の朝、出ることにしましょう。きっと一日くらい、待ってくれるはずよ」


 


***


 


 翌朝、私はギルドの仕事を休み、王都の冒険者ギルドへと足を運んだ。


 重厚な扉をくぐり、中に入ると受付嬢が目に入る。


「総督はいますか?」


「失礼ですが、どちら様でしょうか?」


「サティと申します」


 一応、丁寧に名乗っておく。これからの付き合いを考えれば、挨拶は大事……まあ、たぶん長くはならないと思うけど。


 すると、カウンターの奥からハイドが顔を出した。


「サティ! 来てたのか」


「ハイド、何の用? 手紙だけじゃ要点が分からなかったけど」


「いいから、こっちに来い」


 案内されるままに彼の執務室に入り、椅子に腰かけた。


 ハイドはすぐに切り出した。


「で、同盟の件だが……お前、正気か?」


「もちろん正気よ。報告書にも書いてあるでしょう?」


「ああ、読んだ。だが、魔王と手を組むってのは、どう考えても……」


「《勇者》レイナも賛同してくれてるわよ?」


「……レイナ、だと? あの《勇者》レイナか?」


「その通り。彼女自身、魔王と話して納得していたわ」


 ハイドはしばらく無言になり、やがて静かに頷いた。


「なるほどな……なら、こちらも本格的に協議に入る必要があるな。すまんが、改めて正式な会議の場を設ける。日程が決まったら連絡する」


「ええ。こっちもスケジュールあるから、早めに教えてね。ギルドも、領主の仕事もあるんだし」


「お前……本当に忙しいやつだな。領主もしてて、受付嬢もしてるなんて」


「好きでやってるから」


 ハイドは呆れたように笑い、ぽつりと呟いた。


「お前は凄いな」


 その表情はどこか安心したようでもあった。


「そうだ。ユーリシア様が、お前に会いたいと言っていたぞ。せっかく王都に来たんだ、顔を見せてきたらどうだ?」


「ユーリシア様……そういえば最近会ってなかったわね」


 あの優しく、けれど芯の通った貴族令嬢。彼女のことを思い出しながら、私は静かに立ち上がった。


「分かったわ。少し寄っていくことにする」


 私はギルドをあとにし、懐かしい面影を訪ねるため、王都の街を歩き出した――。




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