03
そんな年下にこうやって、すべてを用意されるのは癪に障るのだ。
「私はれっきとした大人の女よ。お世話される子どもじゃないのだけど?」
「確かに生物としては達観しているのかもしれんが。人間としてはおれ達の方が経験も豊富だ」
「人間的にはこっちの方が年上だよ」
これは、マウントを取られているのだろうか。
「腹立つから、私より上に立つのやめて。不愉快よ。四つん這いになって私より視界の下になりなさいよ」
「急に四つん這いとかどうしたお前」
「なんとなくね、なんとなく。馬車を用意したっていうから、四つん這いにならなくても許してあげるわ。特別によ。次はないんだから。私のやることに口出ししたら三又の刑だから」
三人は、三又の刑という初めて聞くものに、困惑した。
「分かったわかった。とにかく、乗れ」
馬車に乗りながら、質問を受ける。
「三又の刑ってなんだ?」
「三角の形をした物の上に、足を乗せる刑」
「それは痛い」
ラグナが想像してしまったのか、痛そうな顔をする。
想像力豊かだ。
「それが、これがツボにいいの。足の」
「ほんとかー?」
疑わしそうに言ってくる、ジョイの耳を見る。
どうやって加減をしつつ、耳を痛いほど引っ張れるか頭の中で再現していた。
その怖気の走る視線に、ラグナはソッと己の耳を手で包む。
「ん?どうしたラグナ」
「ジョイ、お前は昔からそうやってリンテイの怒りを買っていたが、次いぞ最後までお前はなにも学ばずにいたな」
そういえばと思い出して、ジョイに忠告する。
「え?なんの話だ」
やはり、アホヅラで座っている男にラグナがため息を吐く。
それをリンテイも聞いていながら、どうやって薬の街に住もうかと考えていた。
そうなれば、引越しとなる。
ちゃっちゃと引っ越す為に、ちょこっとある荷物も手にしていた。
お金くらいで、他はなにもない。
家を解約する手続きは、薬の街を見てからの方がいいのだろうか。
「その手にあるもん、なんだ」
カスクが馬を操作しつつ、聞いてきた。
それに、引っ越すことになったら家を借りるためのお金だと、説明する。
それにジョイとラグナはざわり、となる。
「引越し?気が早いぞ」
「なんも見てねェのに」
説得してこようとするが、今の街より遥かに自分に肌が合う環境に思える。
という、暇つぶしに付き合っている間にもカポカポと、魔馬が走る音が聞こえていた。
魔馬は普通の馬よりも体力があり、少し魔法を使えるのでならず者に襲われた時の対策になる。
「あ、そうだ」
魔法馬とも言われる生態は今尚、謎に包まれている。
「いいこと教えてやる」
ジョイがにたりと笑って、話題を提供する。