02
リンテイは、街の詳細を読み終えると立ち上がる。
「じゃ、行ってくるわね」
すかさず行動に移る。
「ん、ん!?どこに!?」
まるで、予想している内容じゃありませんように!と言いたげな顔を浮かべる相手にスタスタと部屋を出ていこうとする女。
「いや、リンテイ!そこ遠いぞ!どうやって行くんだ」
「馬車」
馬車という文明の力があるのに、変なの。
「仕事はっ」
「首にされてもいいし」
仲良くなってない。
あそこはすぐに干渉しようとしてくるし。
「俺らもついていくから、本気で待て」
買い物も必要だと言われ、そういえばそういったのも必要かと思い出す。
野宿は人間の時には、したことがない。
思い留まった悪魔にホッとしていく男。
リンテイを捕獲した状態で、カスクやラグナに伝えようと駆け足になる。
猛進具合に、悪魔だわ……とくたくたになるジョイ。
急いでリンテイを手にジョイは、カスクらにどうにか連絡をつけて彼女の女王が発動したぞ、ということを伝える。
「ぜぇ、ぜえっ!全力疾走しちまった」
やたらアピールしてくるの、なんなの。
「運動不足でしょ」
「お前のせいな!」
「は?」
ドスの響く声にジョイはビクッとなり、やべっという顔を作り慌てる。
「あ、いや、お、おれのせい……です」
「ふん!」
リンテイは人のせいにするな、という気持ちで彼の足のくるぶしを蹴った。
痛さに悶えるジョイ。
それを知らんぷりしていると、ゾロリゾロリと二人が合流してきた。
カスクとラグナだ。
二人は落ち合うと、ホッとした空気を漂わせる。
三人いれば確実ではないが、リンテイのことをフォローできるという、暗黙の何某かができあがりつつある。
「で、なにがどうした」
「やけに息も荒い」
二人に指摘された、リンテイを確保しているジョイはこうこうで、こういうことなのだという説明をダイジェストで纏める。
薬の街に行こうとしていたのを慌てて止めた、と聞いた二人はリンテイの方を向く。
「行きたがってたのを止めたのか。よく無事だったな」
「無事じゃない。色んなところ、蹴られた」
カスクが聞くとジョイは、どんよりした顔で首をふる。
若干カタコトになるくらい、辛い時間だったらしい。
特にジョイはリンテイの破天荒な遊び方が大好きで、かなり慕っていたのを思い出す。
「そうか。馬車を借りてきたから、乗れ。お前もそれでいいか?」
ラグナがリンテイに聞くと、納得して無い顔で三人を不機嫌に見遣る女。
元悪魔は気に入らない。
全部お膳立てされていることに。
己は彼らより年上で、悪魔として土地を、テリトリーを何度も守ってきた自負もある。