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元悪魔はひた走る〜私の邪魔は許さない。聖騎士達を振り回すゴリ押し道中〜  作者: リーシャ


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11私の命令が聞けないの

どこにあるのか聞くこともありだが、忘れる方が多いにあり得るのである。


アセロラを飲んでいるカスクも頷きつつ「この店は王都で人気だからな」と言う。


なるほど、それなら美味しいのは当然なのか。


「王都の人間達はこんなものを食べてるのね」


「もっと美味しいのが店にはあるぞ」


リンテイが働いているレストランはまかないがあるが、特にこれといってなんとも感じない。


なにか理由があるのなら、是非全ての店がそうなって欲しい。


数分後、食べ終わる。


何かをすることもなくなったのでなにをしようと考え、カスクがジッと見てきた。


「なぁ」


「なに?」


「おれは役に立ててるか」


「なにいってるの?」


いきなり気持ち悪い。


「いや……ガキの頃は弱かったからな」


「当たり前じゃない。あんたの言う通りガキだったんだから、弱くて当然。逆に違ったら縄張りから叩き出してたわね」


縄張りは己のものだ。


自分より強い奴が大人しいならともかく、こちらを攻撃してきたのなら本末転倒だ。


己の敷地に巣くう敵などいらない。


思ったことを言うと、真面目顔だった彼の顔が嬉しそうにニヤッとなる。


突然顔の形を変える態度に変なの、と男に対して思う。


何故に今尋ねているのか不思議だ。


カスクは機嫌が良くなったのか、微妙に雰囲気を変えてきた。


「強くても意味はなかったんだな……だが、強くありたかった」


「男だもんね、人間だけど」


そこが残念よね、と呟く。


それに嬉しそうな様子だったカスクが、途端に呆れた顔とちょっと「こいつ」といった憎々しそうな顔を混ぜ混んだ表情を見せる。


「お前というやつは……!」


もしこの女でなかったら、げんこつ一つは起こっていただろう。


上げて直ぐ落としてくる悪魔に翻弄されるカスクであった。






数日、約四日を消費した時に声をかけられた。


人魚の居る湖の討伐準備が完了したと。


なにを言ってるんだろうこの人たち。


「もう忘れたのかっ!?」


「そんな些細な事件でもないこといつまでも覚えてるわけないじゃない」


「そうだった。お前おれらの名前覚えてなかったもんな」


三人は迎えに来た時こちらのきょとん顔に慣れました顔と驚き顔を晒し、馬車へ直ぐ案内された。


その馬車を見て、湖にまで連れていかれそこで思い出した。


「オネーサンマチクタビレタヨ」


「ジョイ、あんた学ばないのね」


「お前がなー!」


リンテイの台詞を予見していたジョイにより速やかに回収された。


下を見ると、茶色に濁った湖の中に佇むピンクパールな女。


「そういえばこの子の下半身見てないわ」


湖の中、確認の為に腕を突っ込もうとしてちらりと後ろを見た。


「ラグナ、下半身持ちなさい」


「お、おれがか?」


指名されるとはつゆにも思わず後退りする男、聖騎士。


聖騎士にも騎士道精神を学ばされる機会があるので、女のヒレを無遠慮に掴む真似は出来ないと頭を振った。


「私の命令に背くの?」


「あー!懐かしいっ」


ジョイが後ろで叫ぶ。


昔、子供達は互いに手を取り合って何故かくるくるとその場で輪になって回りなさいと指示され、彼女が飽きる20分間延々と回らされて、その翌日まで胃の調子が全員悪くなる、という事態に晒される。


なんて一幕を思い出した。


勿論、カスクはガキ大将反乱派なのでやらなかった。


その時は子供達に胃薬を渡して、その効果がとても凄くて大人達の間でも話題になったというおまけ付き。


「ラグナ諦めろ、ガキ大将の仰せの通りにしろ」


「じゃあお前がやれよ」


二人が言い合いを始め、生産的な時間を潰しにかかったので、人魚の顎を指先でクイッとさせ錠剤の薬を飲ませる。


前よりも改良してみたので使いたくなったのだ。


「人魚に顎クイッ!?」


「流石ガキ大将だっ」


二人の言葉をスルーしておく。


薬が胃に溶けるのを待つ。


密かに薬をもう使わないと言われていたので、使ったことに感動してる一部。


そんな空気を知らず人魚は軽快に舌を回す。


「通じました!この丸い白いの凄いですね」


きゃっきゃと興奮する女を無視して、さらりと話を進める。


「今日は獰猛なあんたの言う生物を見に来たのだけど」


「だめです!危ないですっ」


「私はしない。やるのはあいつらよ」


「危ないのは同じなのです」


わたわたと進むのを拒んでいるつもりか、手を掲げる。


「あんた人魚?人間?」


「えっ?人魚ですよ?」


自己申告は人魚だと。


問題は下半身である。


そこを見なければ始まらない。


「足見せて」


「ヒレを見たいのですか?」


ぱしゃんと微かにヒレが見えたような気がする。


ちょっとじゃなく全て見せろと詰め寄る。


「あ、だめです!危険なのが居ます」


「そんなことは良いのよ。ヒレを見れれば、湖なんてどうでも良いの」


「湖どうでも良かったんかい!」


ジョイの突っ込みがくる。


そう、どうでもいい。


自分の生活になにか影響するのではないのだから。


リンテイの気迫に人魚娘はうろうろ視線をさ迷わせてゆるりとヒレの足を出現させる。


それに対して皆色んな反応を見せる。


「魚の半分を切り落として見せてるんじゃないのよね?」


「し、しませんっ」


「もう、男のロマン邪魔すんなよぉ」


ラグナ達がやんやと言うが重大である。


セコい真似をされては堪らないのだ。


そして、煩い男に邪魔されるが鬱陶しくてさっさと終わらせるに限る。


「人魚の涙と鱗ちょうだい」


「……え?」


「あんた通訳の薬二回も飲んだのよ?」


「え?」


「もうそろそろ代金貰わないと大赤字なのよね」


「ひう……それはそうかもしれません」


今まで言葉が分からなかったのに、通じてしまう薬なんだから高価というのを瞬時に導く様子に、その頭脳を言語の方に割けば良いのにと思った。


「詐欺?」


「いや、これは押し売り」


「あんた達からもあとで搾るから」


「「なんの!?」」


それは勿論、こうやって会話してあげていることについての代金である。


絞るのはお金ではなく労働力だが。


「鬼畜だな」



彼も昔からリンテイを見てきているので、その所業には慣れている。


それが己に振りかかることは多々あったが、その時は巻き込まれたくないと避けていたので村の人間達よりは、被害がない方だ。


魚を取って来たのだと言って、魚を村の中に放り投げたりして身体中が生臭くなったことに比べたら、今の状況はずっと静かである。


村人達は、美味しそうに焼いたり干したりして食べていたので、この村ほど共存している所はないのではないかと今も思っている。


彼女が死んでからも村を出たりして経験してきたが、殆どの村は人外と共存出来ず害あるものとして認識していることも多い。


今回の人魚は、どう扱われるのか結末が気になった。


「分かりました……えっと、でも。湖の危険なものをやっつけてからで良いでしょうか」


「別にそんなの誤差だから構わない」


湖の件が、全く片付いていない事を思い出してカスク達は今のうち、言葉が話せる間に聞いておく。


その危険なものはなんなのだ、と。


「あの生物はとても危険です」


「ん、で?」


ラグナが足すが要領を得ない証言が出る。


ピリピリするのだ、痛いのだ、と。


「どうも、人間の認識する危険と、人魚の危険とズレてる気がする」


リンテイが言うとカスクもそう思い始める。


「あんたはやられたの?」


「いえ!私はあのものを知っているので触るだなんてしませんよう」


「そう」



リンテイは、ちょっと事件の詳細を悟り始めて帰ろうかしらと思い始めた。


多分、肩透かしというか、人間達が大慌てすることがなくなるのではないかと。


「名前は?その危険なやつの」


「名前?」


きょとりと、また惚けた顔をする人魚に二人は焦れた声で名前だ、と再度言い直す。


聞いても分かるのかなこの子に。


「えっと。色んな名前があります」


「色んな?」


「どんなものなんだ」


カスクがちょっと苛ついてきているのかズバッと聞く。


「私でもありすぎて分からないですけど、まとめて呼ぶ名称があるんです」


「うんうん」


「クラゲです」


「うんうん、クラゲなクラ……なんだってぇ?」


聖騎士は漸く出された名前に、二つの目をぱちこんと瞬かせて今度はこちらがきょとんとする。


波打ち際に取り残された海草のように。


「クラゲって、あのぷよぷよしたクラゲのことか?」


ラグナがジョイに次いで述べ、人魚女は頷く。

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