表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

リンの言葉

21-25

作者: リン

21赤トンボ


赤トンボ

羽を取ったら

唐辛子



春の風がギザギザしている



碧く深い夜に

犬はくたびれたように寝そべっている

両目の焦点が定まっていない

老いを諦めているように

ぐったりと寝そべっている


猫はうなだれて立ち尽くしている

一つのところを見つめてはいるが

どこをというわけでもない

空疎な現実を直視でもしているように

無感情に立ち尽くしている


犬猫の時計は止まっているが

時間は確かに動いていた



最終の地下鉄が猛スピードで

終着駅を走り過ぎていく


轟音が転がってきて

ホームにいた自称ミュージシャンに当たる

怯えた彼は気を紛らわそうと

ストリートピアノで曲を奏でる


音感の羅列が波紋のように揺れている


音の上で

ポップな赤のスニーカーは架空の韻を軽やかに踏む

蝶結びの靴紐がだいぶ緩んでいる

紐がほどけてしまうのは近い未来の記憶だった



使い古された時刻表はボロボロだった

深夜の春風が吹く時刻のところをめくると

天使の羽ペンの筆跡で

トンボの薄い羽が天から舞い降りてくる

と添え書きされていた



唐辛子もまた赤トンボに変わることがあるのだ




22天使と少年


天使が地上に舞い降りて

コーヒーブレイクをする

引力には逆らえず飛べなくなっていたのだ

そこへ夢想家の少年がやってきて

天使に翼をねだった

天使は快く少年に翼をさずける

少年は当初喜んでいたもののすぐに絶望した

じぶんの希望したものが何一つ叶わない

好きな人のもとへ赴くのも

誰かを助けるのも

嫌なことから逃避するのも

引力に縛られてる翼があったところで

何も起こせなかった


ただ翼が生えただけの少年は

諦めを覚え、一つ大人になった

大人になった少年にはもう翼はいらなかった

大人は歌を歌った

そして

好きな人のことを想い

誰かの気休めになり

嫌な自分を忘れて好きな時間を過ごすことを学んだ


翼を取り戻した天使は空に帰った

万有引力に逆らうのは

そうしたことももうできない人で

全くつまらないことであった

何が楽しくて翼を欲しがったのか

天使にはチンプンカンプンであったのだ


なにか面白そうなことを思いつけば

天使はまた引力に惹きつけられて堕ちていく




23ポップコーン


ポップコーンを放り投げて

口にいれる

またポップコーンを放り投げて

口にいれる

またまたポップコーンを放り投げて

口からこぼす


落ちてしまったポップコーンは

汚い部屋のどこかへ消えてしまった


行方不明になったポップコーン

美味しく食べられるはずだったのに


とは思っていない

ポップコーンならまだたくさんある

一つくらいならどうでもいい


が、気にはなる


ぼくの気持ちも一つくらい

どうでもいい

と思うこともあれば

気にもしていたりする


ポップコーンと等価値な気持ちなら

たぶん他人のより軽いもんなんだろうが

それでもじぶんにとっては

大切なものだった


ポップコーンよりも




24散歩と犬


散歩してると

犬の裸体に出会した

四つん這いで

首輪をはめられ

リードを繋がれている

主人に従うほかない屈辱的な立場だった


ぼくは思わず目を背けた


横断歩道にくると

今度は主人が犬を大事そうに抱きかかえる


変態プレイを楽しんでいるのか

慈しんでいるのか

わけがわからない


犬が一声吠えた

嫌がったり喜んだりする鳴き声だ


そうこうして

ぼくは散歩を終える


その頃には

犬と飼い主のことなんて

とうに忘れていた




25伸び切った枝葉


並木道の

樹木の脇に生えている

名もなき低木は

季節が巡って

伸び放題だ


いずれ管理業者が来て

刈られてしまうだろう


枝葉はじぶんの

残りの時間も知らずに

四方八方に

伸びに伸び切っている


細い枝の一番先っぽで

陽の光に照らされて

一枚だけ

緑に明るい

ちいさな葉が


愛おしくて恋しい

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ