Side キルア・モーデ②
クラウディアは座っていた椅子から降り
綺麗なカーテシーをした。
俺は胸に手を当てて軽く頭を下げ挨拶を
した。
「初めまして。ルイ様の友人でキルアと
いいます」
クラウディアは微笑んで俺に座るよう椅子を
勧める。従僕が淹れた紅茶を飲みながら小さな
お茶会が始まった。
どんな会話をしたのか殆ど覚えていない。
俺がクッキー好きだとかルイの事ととか
だったと思う。
何故その話になったのかも覚えていない……が
クラウディアはハッキリと言った。
「銀色の瞳を持つ人を退治しないといけない
の。私が」
こんな小さな女の子がそんな事を言ったら
大抵は何か絵本か物語に影響されているの
だなと思うかもしれない。
だがこの子は何かが違うと俺の勘が言って
いた。きっと本当にそんな時が来るのだろ
うと直感が働く。
「ではその時はご一緒させていただきま
しょう。姫を守る騎士、いや王子として」
「……クッキー王子かしら」
ふふふ。とクラウディアは笑う。
「そうです。俺はクッキー王子。ディア姫、
よろしいでしょうか?」
「その時まで強くなって下さいますか?」
「勿論です。今より強くなってディア姫の元に
戻ってきますよ」
そんなやり取りをしたと思う。
この時からクラウディアは俺の姫になった。
俺の中での姫だ。
命をかけれる存在。俺にそんな存在ができると
は思ってなかった。
ルイの気持ちが分かる様な気がした。
それから俺は死ぬ気で訓練をした。
どんどん強くなっていく手応えはあったがやはり
ルイには敵わない。悔しいがルイに並ぶ目標は
止めて自分なりの高みを目指す。
皇帝陛下直属の赤騎士団が現役を退いた。
今後は魔獣討伐には行かず陛下だけを守る
事になり代わりにアダン殿下率いる新しい
赤騎士団が結成された。勿論ルイが団長だ。
俺はレオン様の推薦で副団長に任命された。
でもまだまだだ。
まだディア姫には会えない。
もっと強くならなければ。
ある日ルイから久しぶりにディア姫の事を
聞いた。
山猿と噂されていると。なんて事だと怒って
いた。なんでもディア姫は突然に体を鍛え始め
たらしい。
今まで殆ど部屋から出て来なかったのに最近は
活動的になり心配だと。
俺は良い事じゃねーかと言った。
どんどん外に出るべきだと。
ルイは言った。お前は分かっていない。
あの子の可愛さと人を魅了する美しさを。
外になんか出しては駄目なんだと。
俺は想像力が乏しいからディア姫がどう成長
しているかなんて全く分からない。
でもきっと凄く綺麗になっているのだろう。
俺が一目惚れした時でさえあの眩さだ。
でもそんなに過保護になってはディア姫の為に
ならないのではないか。そう思ってもいた。
レオン様から呼ばれ書斎に通された。
そこで来年からディア姫の護衛騎士になれと
言われた。命をかけれるかと聞かれ俺は
即言った。
「勿論です」
レオン様はどうやら俺がディア姫に惚れている
事を知っていたらしい。
日々剣術や魔力の訓練に精を出していたのも
いつかディア姫の護衛騎士になりたい為だとも。
俺の気持ちを利用するレオン様。
俺はレオン様が俺を利用する事を利用して
ディア姫の側に居れるようにした。
お互いの目的が合致したのだ。