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お守り⑧


コンコンとドアをノックする音が聞こえて

メアリーの声がする。


「ノア様、お嬢様、旦那様とルイ様がお戻り

になりました」


はっと2人で顔を上げた。

窓からは白白と夜が明けていた。


「姉様、今の話を父上に出来る?」


私は小さく頷いた。

信じてもらえなくてもしなくてはいけない。

ローブの人物が何かをする前に止めなくては。


2人で部屋を出てメアリーと3人で廊下を

急ぐ。丁度屋敷の入口付近ででレオンお父様

とルイお兄様が外套を脱いでいるところだ

った。私はルイお兄様の無事な姿を見て思わ

ず抱きついた。


「ルイお兄じゃまぁぁぁーー!ご無事でぇ

ぇぇよがったでぇずぅーー!」


気がゆるんでなのか先程までノアの胸の中で

散々泣いたのにまた涙が出てきた。

そして鼻水もだ。鼻水のせいで上手く話せ

ない……。


レオンお父様もルイお兄様も私が泣く姿を

初めて見るので驚きと戸惑いと守ってあげな

ければという気持ちが入り乱れているようだ。

そういえばノアにしか泣き顔を見せた事が

なかったよ。発作の時と先程ね。


「うん。心配かけてごめんね。ディア、

ただいま。ディアのお守りのおかげ……」


ルイお兄様が胸ポケットからお守りを出した。

私は素早くそれを奪い取り入口のホールにある

暖炉に投げ入れた。

ちなみに暖炉は冬に外から帰って来ても直ぐに

体が暖まるように入口のホール内に作られて

いる。まだ雪は降っていないが最近冷え込んで

きたので今日は暖炉に火が入っていたのだ。


「あぁぁぁ……ディア……。ディアの手作り

のお守りが……」


ルイお兄様は悲しそうな表情をして暖炉を

見た。


「う“ーーー!お兄じゃまぁぁーー!ひっく。

駄目じぇずわ……ひっく。そのお守りの

じぇいでぇキルア様ぐがぁーーひっく。お

にゃくなりに……」


「ディア……キルアの事をもう知ってしまった

のだね……」


……流石だ。私のグダグダな喋りを全て聞き

取っている。自分でも何言ってんだか分から

なくなってきてるのに……。


「う“ーー。う”ーー」


もう獣のように泣いてる私。

レオンお父様もルイお兄様も段々とオロオロ

してきた。ギャン泣きしている私にどう接し

ていいのかが分からないようだ。

それを察知してノアが助け舟を出してくれた。


「父上、兄上、姉様のお守りの事なのですが

姉様からお話があります」


折角ノアが代弁してくれたけど、私はただ泣き

じゃくるだけで何も言えずにいた。


前世での夫セイさんの時も私はずーっと泣いて

いた。涙が次から次へと出てきて目ん玉が溶ける

のではないかと思ったものだ。

だからきっと今回もしばらく涙は止まらないで

あろう。


だって大事な人が突然に消えてしまったのだ。

それを脳が中々理解してくれない。


『ディア姫、行ってくる。バンバン倒して予定

より早く帰ってくるからな』


って、笑顔で。笑顔で言ってたのに。

それなのに……。


早くお守りの事を伝えてたいけど今は無理

だと悟った。

多分、家族全員が。

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