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お守り⑥


こ、このご遺体は……キルア様!?

そんな……。

気がつくと私はご遺族の手を握っていた。

すると一瞬目の前に眩しい光が見えそれから

山岳地帯が見えた。


キルア様が見える。


「ルイ、緑も紫も来たから俺はちょっと向こう

を見回ってくるわ」


「分かった。1人で行くなよ。ジムとリチャード

を連れて行け」


「了解」


キルア様はニッコリ微笑んで歩いて行く。

あっ!これは1人で行く気満々だ。

駄目だよ。1人は危険だよ!勿論、私の声は

届かない。


少し奥まった場所に来たキルア様は魔獣の足跡を

見つけた様だった。

踵を返したキルア様の前に黒いローブを羽織った

人物が立っていた。顔はフードを被っていて

よく見えない。


「誰だ?お前」


「ふふふ。誰でもいいよね。それより君の胸ポケ

ットに入っているモノを見せてくれない?それから

僕の愛しい人の香りがするんだ」


「あ?何言ってる」


キルア様が腰を低くして剣を掴み構える。


「嫌だな〜。戦うなんて今はしたくないんだよね。

起きたばかりでさ。怠いんだ。その胸ポケットの

モノを渡してくれるだけでいいからさ」


ローブの人物が近づいて来る。

キルア様は後ずさって言った。


「誰が渡すかよ。ボケ」


口が悪い……。


「そうか〜。よっぽど死にたいんだね」


そう言った瞬間光りがキルア様のお腹に当たり体

が吹っ飛んでいた。ゴロゴロと地面に転がりなが

ら立ち上がる。


「へえ〜。風魔力で防御したか。人間のくせに」


人間のくせに?この人物は人間ではないのか?

私は早く逃げてとキルア様に叫ぶが届くはずも

なく……。

また私の目の前が眩しく光り一瞬目を瞑った。


次に見えた光景はキルア様が倒れていた。

何?何があったの!?

キルア様!キルア様!

私は叫ぶ。


「最初から渡してればねぇ〜。命までは

取らなかったのにさ」


ローブの人物は私のお守りを手にしていた。

ゆっくりとフードを後ろに下げた。


「!」


私は息を飲む。

……。夢に出てきた美青年と同じ銀色の瞳だ。

雰囲気も同じ。でもアイツではない。

それでもゾワっと鳥肌が立った。


「ふふふ。この香り。やっぱり愛しい人も

今世にいるんだね。嬉しいな〜。いつ会える

のかな〜」


うっとりした表情でお守りに頬擦りしている。

すると倒れていたキルア様が右手を上げると

竜巻が起こりローブの人物が持っていたお守り

が宙に舞いキルア様の右手に収まった。

そしてキルア様は


「誰がお前に会わせるかよ……」


と言ってお守りを手の中で燃やして

ニヤリと笑った。

お守りから追跡出来ないようにしたのだ。


「くっ、お前!本当に腹が立つなぁ!あ〜!

その色男っぷりで僕の愛しい人を誘惑したん

だろう!」


ローブの人物はキルア様を足で蹴って転がし

仰向けにさせてから……。

もう抵抗する力も残っていないキルア様の

顔をガンガン踏みつけてから火をつけて

焼き始めた。


「もうこれで誘惑出来ないよね〜」


そう言って笑いながら。


止めてーーーー!


私は聞こえないのが分かっているのに声が

枯れるまで叫んだ。


「お嬢様!」


メアリーが私の腕を掴みながら叫んだ。

その声で我に返る。

全身に汗が流れている。

私はご遺体の右手を握ったまま座り込んでいた。

時間にして2、3秒だろうか。


一瞬で見たあれはキルア様の最後……。

ローブの人物は……。人型の魔獣ではない。

私には分かる。きっと……。いや絶対に

『悪魔』だ。


「お嬢様、大丈夫ですか?」


メアリーが心配そうに顔を覗き込む。


「このご遺体は……キルア様……ですわね?」


力無く訊く。


「……そうでございます。こちらに運ばれた

時にはもう……」


「そう……」


私はよろよろと立ち上がり部屋を出た。

廊下を歩きながら自分に言い聞かせる。

落ち着け、まずは落ち着けと。

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