お守り④
次の日、赤騎士団は北の山岳地帯へと出発
した。
「大丈夫かしら。今回は魔獣の数が多いと
言ってらしたけど……」
私は少し不安だ。
「アダン殿下率いる赤騎士団は最強なので心配
ございませんよ。騎士の皆さんは魔力持ちだけ
でなく魔法力持ちも沢山いるとか。協力し合って
直ぐに魔獣など倒してきます」
メアリーがニコニコしながら言った。
「私、魔法力持ちって知らなかったのだけど……」
そう、私はこの世界には魔力持ちしか存在しない
と思っていた。『力』といえば魔力だと。
だって前世読んでた物語には魔力持ちしか書かれ
てなかったのだ。これまたメアリーと同じでエド
に関してもあまり詳しく書かれてなく魔力持ちで
説明されていた。確かに魔法力と魔力のどちらも
持っているから間違ってはいないけど。
もう少し読み進めたらエドも魔法力の事にも触れ
た話が出てきたのだろうか?
魔法力についてはユーリ様から聞いたのだ。
「おいおいおい!レオン。お前、魔力と魔法力
の教育はしてないのか?家庭教師は何を教えて
いたのだ」
呆れたようにユーリ様はため息をついた。
いや、ごめん。きっと習ってる。
でもアフロなおばちゃんになってしまったから
なのかこちらの常識学の記憶にムラがあって。
魔法力の事は記憶から抜け落ちてしまっていたら
しい。説明したかったがそれを今言うとレオン
お父様に身バレする。ここは馬鹿なフリでもし
とくか。
「た、多分、習ったと思いますわ。でもきっと
興味が無く私の周りは殆どが魔力持ちです
から記憶から抜け落ちてしまったのだと……」
恐ろしいほど馬鹿な言い訳だ。まずこの世界に
生まれて魔法力に興味がないなんてあるかーい。
興味がなくても記憶には残るだろう、普通は。
でもユーリ様は私が異世界人だと知っているので
『記憶から抜け落ちた』
部分で魔法力の事を知らないと理解してくれた
らしい。
「ふむ。ディアは優秀だがそちらの科目は苦手だ
ったのだな。どうだレオン?これから私がこの国
の魔力や魔法力について教えるというのは。私
以外に適任者はいないと思うけど?」
レオンお父様は少し考えてから言った。
「ディアには魔力覚醒の兆しが全く無かったの
でそちらの方を詳しく勉強させるのは酷だと
思っていたのだ。ディアが覚醒出来ない事を
気に病んでしまったらと思うと……。だから
家庭教師にさらりとだけ伝えるようにと言って
おいた。申し訳ないなかったな、ディア」
そんな事まで考えてくれてたなんて。
そして私の変な言い訳を信じてくれてありが
とう。溺愛万歳だ。
「いいえ、レオンお父様、私の為にありがとう
ございます」
「あ〜、で?俺が教えてもいいのか?」
レオンお父様と手を握り合ってキラキラしていた
のに!もう少しこの綺麗で色っぺーお顔を見させ
てくれたまえ。
で、魔力学は学校に入る前にきちんと学んだ方が
いいという結論になりユーリ様から学ぶ事にな
ったのだ。週一回で。
むむむ。これはユーリ様の望んでいた『週一会う』
になってしまった。策略か!?
「妻がね、ディアとは3歳の時から会っていない
のだよ。だからね私も会いたいと言ってきかな
いのだ。妻にもディアを会わせてやりたから
学ぶ場所は俺の屋敷でいいな?」
と、無理矢理決めた。
奥様ともレオンお父様は知り合いらしく嫌とは
言えなかったっぽい。
お前も来るか?と聞かれレオンお父様は秒で
断ってからエドを一緒に行かせると言っていた。
メアリーがショックを受けていたがそこは
レオンお父様の決定なので素直に従っていた。
そんなこんなで来月からスタートする。
回想終わり!今に戻る。
「エドも魔法力持ちだったのね。こんなに側にいる
のに知らなかったわ」
『それに異世界勉強会の時に全然魔法力について
教えてくれなかったしね』
私は後半エドにしか聞こえない小声で呟いた。
「自然にお分かりになるまでわざわざ話す事も
ないと思っておりましたので……」
『一度に色々頭に詰め込んでしまっては大変だろ
うと思いまして。次にと思っていたら2人で会うの
を禁止されました』
エドも後半ごしょごしょとメアリーに聞こえない
ように私に伝えた。