お守り②
私が何を刺しているか気になっていたようだ。
「何に見えるかしら?」
当ててくれ。これは分かるだろう。
「緑色ですね……。全体的に広がっていて……」
そう、そう。
「あっ!ゴブリンでございますか?」
何でゴブリン?ゴブリンってあれでしょう?
よくファンタジーに出てくるヨーロッパの
小鬼さん。
「ゴブリンって緑色なのかしら……?私の記憶
では絵本に出てくるゴブリンの肌の色は緑では
なくってよ?」
「お嬢様、私の国のゴブリンは緑の肌なのです」
「メアリーの国?あら?メアリーはこの国出身で
はないのかしら?」
だってこの世界の国ってここしかないじゃん。
「私はエルフの国、ポジタール国の出身でござい
ます」
はい。一休さんのように頭の中でポクポク、
ポクポクなってますよ。中々チーンが来ません。
ポクポク。ポクポク。理解できないようです
私の頭。
「アグオス帝国以外に国がありますの?それに今、
エルフって……」
エルフって妖精だよね?
「はい。エルフです。私はエルフ族なのでござい
ます。そしてエルフの国は次元が違うのです。
ですがアグオス帝国とは繋がっており貿易もし
ております」
チーン。
えええーー!そうなのぉーー!?
知らんかったわー。誰も教えてくれない
から知らんかったわー!
あれ?物知りのエドも驚いた顔しとる。
エドも知らんかったんかーー!
次元って。流石はファンタジー世界だ。
そう来たか!
「エルフの国があることをアグオスの国民は
知ってるのかしら?」
「はい。貿易をしている事は常識的に知って
おりますがまさかメアリーがエルフ族だった
とは……」
まだ少し驚いているエドが答えてくれた。
エドが驚いたのはメアリーがエルフ族だっ
たってことか。国民もエルフを知っている。
……ってことは。えぇぇ〜!エルフの存在と
か国とか知らんかったの私だけぇ!?
前世読んでた物語にもメアリーの出身につい
ては全然書かれてなかったよ……。
「では、メアリーのようにこちらにエルフの方
が働きに来ていたりするのかしら?そちらの国
にこちらの人も行ってたりとかしてますの?」
「いえ、貿易はしていますが人の行き来は滅多に
ございません」
「何故ですの?」
「それはかなり魔力が強いエルフでないとこちら
の次元に入った瞬間に消滅してしまうからです。
アグオスからポジタールへも同じです。食べ物
や品物などは消滅しないのである程度魔力が強い
者達が貿易する仕事についております」
「そんなお互いに危険な国?次元?とわざわざ
貿易しなくともよいのではないのかしら?」
「それぞれにある物、無い物がありお互いに国を
潤す為には必要不可欠なのでございますよ」
「そういうものなのね。あら?メアリーがこの国
に住んでいられるという事はメアリーは魔力が強
いのね」
「はい。私、エルフ皇族の血筋なんでございます。
エルフ皇族は魔力が強いのです」
「え!?皇族ですの!?そんな高貴なお方がメイド
なんて!!直ぐにレオンお父様に言って待遇を変え
てもらわないといけませんわ!」
私は慌ててソファーから立ち上がった。
「皇族の血筋と言っても遠い親戚なので下っ端も
いいところでございますよ。その事情は旦那様も
よく承知されておりますのでご心配無用でござい
ます。それと私がエルフ族という事を知っている
のは旦那様と奥様、皇帝陛下だけなのでご内密に
して頂ければと思います」
「そ、そうなのですね。分かったわ。絶対に誰
にも言わないわ。ね?エド?」
私はエドに向かって言う。
「了承致しました」
エドは冷ややかな目でメアリーを見て頷く。
何でそんなに冷ややか?
私はソファーに座り直す。
色々事情があるのだろうけど何故私のメイド
などやっているのだろう?
ま、いいか。
「もしかしてレオンお父様が時々メアリーを
王城に連れて行くのって貿易関係かしら?」
「さようでございます」
そうだったんだ。
疑問が一つ解決した。
「メアリーは2つの国の架け橋になっている
のね。凄い立派ですわ」
私はニッコリ微笑んだ。
するとメアリーが顔を赤くした。
「お嬢様に褒めていただけるなんて……。
もう死んでもいい……です」
なんて事を言う。
私はただのアフロなおばちゃんだ。
そんなに喜んでもらうと罪悪感が……。
『じゃあ死ねよ』
ん?何処からか暴言が聞こえたような気がする?
周りを見回すけどエドしか居ない。
ん〜幻聴か?