お守り
秋も終わりそろそろ雪が降る季節になって
きた。今月、ユーリ様と会った時ちょっとし
た進展があった。
いつもの様にユーリ様、私、レオンお父様、
エド、メアリーで神殿御用達の教会にて会っ
ていた。この教会は絶対に安全だからと神殿
お墨付きなのだ。
「ディア、学校に行きたいと聞いたがそうなの
かい?」
ユーリ様が私に問う。
何処からその情報を手に入れた!?
家族でしか話してないぞ?
恐るべし……。
「はい!私、学校に行ってみたいですわ!
色々行事とかもありますわよね?とても興味深い
です」
とりあえず可愛い姪バージョンで答える。
「ディアはもう学校に行かなくとも全ての教育
は家庭教師で終わっている。それにその情報は
何処から手にいれたのだ?」
ぶすっとした顔でレオンお父様がユーリ様に意見
する。いつも大人の男!って感じなのにユーリ様
と一緒にいると子供みたいになるんだよねぇ。
「レオン、神殿の情報網を侮ってはいけないよ?
皇帝側にだってあるだろう?」
爽やかな笑顔のユーリ様。
「国の機関を私物化するな」
更にぶすっとしたレオンお父様がジロリと睨む。
ホントだよ。私の情報手に入れる為に動かすな。
「ディアは学校で勉強とは違う事も学んだ方が
いいではないかい?お前が殆ど屋敷から出さな
いもんだから箱入りもいいとこだ」
「ユーリ叔父様、私もあまり外には興味が無かっ
たのです。行きたい所も無かったものですから
屋敷から出なかったのは自分の意思ですわ。
レオンお父様のせいではありません」
……多分な。
あっ、レオンお父様が感動して目がうるってる。
ヤバイ。色気がヤバイ。
「そうか……。それがどうして学校に行きたく
なったのだ?」
サラッサラの銀髪をかき上げながら私を見る。
こちらも色気半端ねぇ……。
色気合戦か!?
美人だな!おい!
「私も14歳、今月で15歳ですの。ずっと引きこ
もっていてもいいのかしら?と思ったのですわ。
でも突然に色々行くよりも年齢的に学校が良い
と思っただけです。15歳から高等学校に入れ
ますわよね?」
どうだい?何となく良い感じの答えじゃない?
「なるほどね。ディアも少し大人になって色々
考えたわけだね。それならレオンも反対など
しないよね?」
おっ!ナイスアシスト!
「まぁ……。来年は一応魔力検査を受けて
から学校を決める予定ではある」
「レオンお父様!本当ですか?ありがとう
ございます!嬉しいですわ!」
わーい。ユーリ様学校の話題を出してくれて
ありがとさんです。
って、事があったわけで。
私はせっせと刺繍を刺しながら思い出し笑い
をしていた。
「ふふふ」
「お嬢様?何か楽しい事でもあったのですか?」
メアリーが刺繍の糸が入っている箱の中を整理
しながら訊いてきた。
「来年は学校に行けるのだと思うと嬉しいの
です。自然と笑みがこぼれますわ」
あぁぁ、その事か。みたいな表情でメアリーは
私を見る。
「そんなに学校に行きたいのですか?」
エドが3時のお茶を淹れながら訊いてきた。
ちなみにこちらの世界でも午後のお茶の時間は
3時だ。
今日のお菓子はキャラメルクレープ。
たっぷりの生クリームにその上からアーモンド
スライスを散らしキャラメルソースをドバッとか
けて生地を折りたたみ完成。
前世からこのクレープ大好きだったのよね。
こちらの世界にはクレープが無かったので
私が教えたのだ。例のごとく前世のクレープを
考えた人ごめんなさい。
また私が発案者になってしまった。しかも
今、街ではクレープが大ブームになっている。
私が料理長に作り方を教えたらこれはお店を
出したら絶対に繁盛する!って興奮するものだか
らレオンお父様に相談したら出してみるか?って
なってとんとん拍子にクレープ屋がオープンし
ヴィンセット家にはガッポリお金が入ってきて
いる状態だ。
話がズレた。元に戻そう。
「ええ、とても行きたかったですわ」
ふふふと微笑んでまた刺繍を刺す。
エドは『ふーん』と言った感じで少し面白く
なさそうな顔をした。
「お嬢様?今回の刺繍は……」
メアリーが私の手元を覗き込んだ。