Side ルイ・ヴィンセット④
それからのディアはどんどん変わっていった。
3歳のディアがそのまま育っていればこう
なったであろうと思わせる。
いや、想像以上だ。
勿論、月のディアにも惚れ込んでいた私だが
太陽のディアは格別だ。
ディア本人は色気が無いとブツブツ言っていた
が。確かにあのディア特有の色気は無くなった。
しかしそれがどうだと言うのか。
色気が無くてもディアの魅力には何ら関係が
無い。
私は周りの男どもに更に警戒しなくてはならない
ことに気が付いた。
屋敷内の使用人は男女問わずディアに惚れ直して
いる。それなのにディアは男の使用人が珍しい
からと見つけると自分から声を掛けまくっている。
次にエドだ。月のディアだった時には見せなかった
顔をするようになった。あれは紛れもなく惚れて
いる。この屋敷内の男で1番側にいて一日中一緒
にいるのだ。惚れないわけがない。あの無表情で
人生面白い事など一つも無いような顔をしていた
エドが……。
そんな男にあんな表情をさせるとは。
流石としか言いようがない。
そしてノアだ。
今までは『可愛い弟です』といった顔をして
ディアの周りをうろちょろしていたのに。
一見み『可愛い弟』のノアだが何かが違う。
雰囲気が変わった。何がと訊かれれば上手く
説明が出来ないのだけど。
注意しておかなければ。
出来ればディアを屋敷から出さずに永久に閉じ
込めていたい。しかしそうもいかなくなって
きた。ディアが学校へ行きたいと言い出した
からだ。私はもう卒業してしまっているので
同じ学校には通えない。また一つ問題が増えて
しまった。
ディアは体力をつけるのだと屋敷内の庭を
駆け巡る。凄い体力だ。もう鍛えなくとも
いいのではないか?
そう思っていた時、私の騎士団の福騎士団長
で幼馴染のキルアと知り合いだと知った。
『ディア姫』『クッキー王子』と呼ぶ仲だとは。
愕然とした。私のディアにいつの間に近づいた
のだ。しかも仲がいい。
悶々とする。
どんどん変わるディア。
そんなディアに少しだけ分かってもらおうと
思った。私にとって君がどれ程大切で愛おしく
宝物のような存在なのかと。
2人になれるチャンスがあり色々と話した。
エドにも釘を刺しておいた。
その中で愛の告白に近いことも言った。
「私の可愛いディアは山猿ではなく野生児だ
とね!」
おかしい……。
ディアの反応がイマイチだ。
何故だ?『野生児』と言われて嬉しがらない女性
はいないではないか。
野生児とは『金色の女神様』の別名とも言われて
いる。
男性はプロポーズする時などにその相手を『金色
の女神様』に例える表現として野生児を使う。
そして女性は『金色の女神様』と同じくらい自分
がその男性には美しく思われていると感激するの
だ。野生児とはそのような特別な時にしか使わな
い尊い言葉なのだが。
いくらディアが箱入り娘だとしてもそのぐらいの
知識はあるだろう?この国歴史を家庭教師から
習っているはず。その時にどの教師もこの野生児
の話はするはずなのだ。
と、すると私は何かを失敗したのだろうか?
太陽のディアに戻ってからも発作は起こった。
今年は私が留守にしている時だ。
予め父上やノア、エドにも頼んでいったが心配
だった。やはり毎年同じ日なのだ。
そう、『金色の女神様』がアーサー王、聖女様、
大魔導士様達の前から姿を消したと言われてい
る日だ。ディアと何か関係があるのだろうか?
偶然にしてはあまりにも毎年ピッタリその日な
のだ。
父上も気が付いているだろうと思う。
近々訊いてみようか……。
そう考えていた時、あの事件が起こった。