Side ルイ・ヴィンセット②
叔父上の葬儀も終盤になった時父上が魔力
暴走を起こした。
無理もない。父上は叔父上を溺愛していた。
幼い頃に両親を事故で亡くし父上が年の離れた
叔父上を育てたようなものだったのだから。
その叔父上がこんな悲惨な最後を迎えるなど
誰が思っただろうか。
悲しみのあまり父上は自分を保っていられなか
ったようだった。
神殿様をもってしても父上の魔力暴走を止める
事が出来ずこれはもう軍を呼ぶしかないところ
までいったその時。
私の手をゆるりと離してディアがトコトコと
魔力暴走をしている父上の方へ歩いて行った。
父上の周りには炎が渦巻いていて誰も近づけ
ない。父上の姿さえも炎でユラユラしていて
よく見えない。そんな炎の中にディアは迷う
ことなく入って行った。
「誰か!止めて!あの子を……ディアを!」
母上の叫ぶ声がして私は我にかえった。
何故、手を離してしまったのか!もう後悔しても
遅かった。ディアは父上の炎に飲み込まれてしま
っていた。
何分経っただろうか?
あんなに勢いよく渦巻いていた炎がパッと消えた。
そこにはディアを抱き上げてキツく抱きしめてい
る父上が立っていた。
その後は魔法医師や魔力医師などが呼ばれ父上と
ディアは別室で診察を受けた。
2人共無傷だった。
その間も父上はディアを離そうとはしなかった
らしい。
別室から戻って来たディアは独特の色気を纏って
いた。微笑む顔は太陽ではなく暗闇を仄かに照ら
す月のようになっていた。
叔父上の葬儀から程なくしてディアはヴィン
セット家の養女となった。
その時ディアは4歳で私は7歳になっていた。
一緒に生活をしていてもやはり太陽のような
ディアではなかったが私の彼女に対する好き
な気持ちは変わらなかった。
月のようなディアも魅了的だったのだ。
しかし食事はサラダかスープしか食べないし
殆ど部屋から出て来ない。
何処を見ているのか分からない目をして窓
の外を眺めている事が多かった。
そして熱を出したり発作を起こしたりよく
倒れたてベッドに居ることも多かったので
心配な毎日だったが話しかければ必要最低限
の答えは返ってくるし月のような微笑みを
返してくれる時もあったので成長すれば何か
また変わっていくかもしれないと思っていた。
ノアも『姉様!姉様!』と暇さえあればディア
に付いて回った。
ノアは覚えていないだろうがディアが光りを
彼に与えたのだ。無意識でも大好きなのだろう。
でもその好きはきっと家族として姉としての
好きにしか見えない。そこは安心できる。
そんな中で父上はディアにメアリーという
メイドを付けた。メアリーもディアの魅力に
やられていたがそこは女性だ。
今のところは安心だ。
それから何年かして次はエドアルドという
従僕が付いた。
父上のお気に入りらしい。なんでも魔法力と
魔力を持っているそうだ。ディアを守るのに
最適だと言っていた。
見た感じディアにはそれ程興味がある様には
見えなかったので今のところエドも大丈夫だ。
しかし男だ。油断は出来ない。
ディアはヴィンセット家に来た時から1つだけ
素直に聞いてくれる事があった。
それは私の膝の上に座る事だ。
父上がいくら自分の膝の上に座らせてもするりと
逃げてしまうのだが私がおいでと言って膝を
ポンポンとするとちょこんと座ってくる。
勿論それは父上が居ない所でやっている。
そうでないと私が殺される。
父上は本気だ。ディア絡みの事は親も子も無い
のだ。
ディアは母上の膝の上が1番好きらしく一度
座ると長くいてそのまま眠ってしまう時も
あった。
ディアの中で何かが違うようだがよく分からない。
頻繁ではなくたまになのだが私はとても嬉しかっ
た。ディアが膝に座ってくれると本当に大好きだと
再確認してしまう。
もうどんなディアでもいい。
自分の物にしてしまいたい。