Side エドアルド②
俺が6歳になった頃娘の従僕になった。
娘は8歳だった。
人形の様に綺麗で愛らしい顔。8歳にして
この色気か。どんな男も魅了するだろうな。
それが第一印象だった。
娘は無表情だ。
それもその筈。魂に色が無いのだから。
透明だ。そんな人間初めて会った。
いや、そもそも魂に色が無いのだから人間と
言えるのか?
色々と違う意味で興味が沸いた。
面白い。この娘の魂に色がつく日が来るのだろ
うか?
「お嬢様、初めまして。今日から従僕として仕え
させて頂きます、エドアルドと申します。エドと
お呼び下さいませ」
俺は深々と頭を下げた。
「そう……」
娘はその一言だけ言って少しだけ微笑んだ。
その笑顔からは何も感じられなかった。
本当にコイツ生きてるのか?
その時に初めてルイとノアとも会った。
奴らは俺をジロジロ見ながら品定めでもしてる
様子だった。
「まぁ、いいかな」
と、どちらが言ったか分からなかったが小さく
呟いた声が聞こえた。
その後メアリーが娘の世話について説明するから
と言って俺と2人だけになった。
「いいか?お嬢様に手を出してみろ?殺す。
そしてお嬢様付きになったからにはお嬢様の
為に死ね」
メアリーは無表情で淡々と言ってきた。
「手は出さねーよ。あんな人形によ。アイツ
生きてるって言えるのか?どう見ても中身なんか
ねーよな?そんな女の為に死ねるかよ。そもそも
6歳児にそんな事釘刺すなよ。アホらしい」
メアリーの拳が俺に襲いかかる。
上手くかわし俺も一発入れる。
それをかわしたメアリーは言った。
「ははは……。お前は普通の6歳児とは違う
だろう?それにお嬢様に興味を持っただろう
が。私には誤魔化せないぞ」
ちっ。そーゆう興味じゃねーっての。
そもそも恋とか愛とか人を好きになるとか溺愛
とか知らねーから。そんな感情。
「中身が無い……か。今は……な。お嬢様は
偉大なお方なのだ。そのうちお前も分かる時が
くる」
「へぇ〜。テメーはあの娘の正体を知ってて
側にいるってことか。それはご苦労なこった。
俺の命は俺のもんだ。誰にも指図は受けねーよ」
本当にイライラする奴だ。
その日から従事する毎日になったが特に変わっ
たこともなく噂と同じで体の弱い娘だった。
旦那様は娘を溺愛するあまり屋敷から殆ど出さず
奥様も目に入れても痛くないぐらいに可愛がった。
ルイもノアも娘に執着が凄い。この娘、本当に
大丈夫なのか?こんな箱入りで。
娘は9歳の頃から毎年同じ時期に発作を起こす
ようになった。しかし次の日になると何も
覚えていない。発作を起こしてる間だけ少し
魂が揺らぐ。気になりはするがそれも発作が
落ち着くと元の透明な魂に戻るから俺も直ぐに
そんな事は忘れてしまっていた。
最初は旦那様の従僕になるつもりでいた俺だが
この心が無い娘をやたらと気になり出して
いた。メアリーが知っているであろう娘の
正体も気になる。とりあえずはずっと娘の従僕で
いる事にした。
月日は過ぎて俺は12歳、娘は14歳になった。
その日、昼食を食べにダイニングルームへ向かっ
ていたら突然に娘が頭が痛いと言い出した。
あ、いつものやつか……。と思い一旦部屋に戻る
事を勧めた。
部屋に戻りソファーに座ろうとした途端に娘は
倒れた。いくら時間が経っても目覚める気配が
無い。
それからは奥様が慌ただしく医者だ、薬師だ、
何だ、と色々呼んで娘を診てもらっている。
そうこうしてるうちに旦那様も帰ってきた。
まぁいつもの事だ。そのうち目も覚めるだろう
さ。毎回人騒がせな娘だ。
俺はそう思って部屋の前で待機していた。
どのくらい時間が経っただろうか?部屋の中で
物音がした。目が覚めたのか?
ノックしても返事が無い。何回かノックしてみる。
やはり返事は無い。
静かにドアを開けてみた。
はぁ?娘が見た事もない踊りを鏡に向かって
していた。何だ?あれは?頭がおかしくなった
のか?