表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/318

脱走③


「そうですか……」


おっ!詳しく訊かれなくて良かった。


エドは私に改めて向き直り真剣な面差しで

話し出した。


「お嬢様の前世は異世界人でその記憶が

あります。その時に培った事を今世に

活用するのはいいと思います。ですが今

お嬢様は『クラウディア・ヴィンセット』

なのです」


「う?うん?」


私はエドの言いたい事が分からずに頷いた。


「お嬢様の存在は唯一無二なのです。ヴィン

セット家の皆様にしても神殿様にしても。

そしてこれから出会うであろう人々にもです。

それを自覚して頂きたい」


「そ、そんな大袈裟だよ。私なんかより綺麗で

可愛くて頭良いい完璧な令嬢さはこの世界に

沢山いるでしょう?だから私がそんな特別って

わけでもないだろうし。むしろこんなヤンチャ

娘なんてねぇ……」


エドが顔を近づけて更に続けた。


「『私なんか』とか『こんな』ではございま

せんよ!?何故ご自分を卑下なさるのです?

異世界では『おばさん』だったからですか?

異世界での身分が低かったのですか?だと

してもこちらでは生まれ変わってノワール

の令嬢なのです。いえ、そんな身分などど

うでも良いのです。お嬢様自身に魅力があ

るのですから」


エドの顔が近い……。


……よく分かってらっしゃる。

そう、おばちゃんだったからだよ。

こんな美少女に生まれ変わったって前世の

記憶が勝ってしまうのよ。

それにお色気は未だに家出中だし、山猿だし

最終的には野生児だぜ?

そんな私が唯一無二の存在だなんて信じられ

るかっての。


「そ、そうなの……?」


信じられないけど躊躇いがちに聞いてみる。


「お嬢様にもしもの事があればこの国は破滅し

ます。旦那様や神殿様がきっと魔力暴走起こす

でしょうしルイ様やノア様が闇に堕ちます。

そうなればもう誰もこの国、いやこの世界を

救える人はいないでしょう。それほど凄いお方

達にお嬢様は溺愛されているのです」


「……」


「ですからもっとご自分を大切になさって下さ

い。今回、助けて頂いたのにこんな事を言うの

は憚られますが前世の記憶である程度戦えるか

らといってあんな奴らにお一人で挑もうとする

なんて……お嬢様が目を覚さないと聞いた時の

私の気持ちが分かりますか!?本当にお嬢様に

何かあったらと思うと私は……」


私を真っ直ぐに見ていた水色の綺麗な瞳に光る

ものが見えた。

ぐっ……。アフロなおばちゃんは男性の涙に弱い

のよ。泣かないでくれ。頼むから。

エドの忠誠心がこんなに深いとは思ってなかっ

た。従僕の鑑だね。素晴らしいよ。

そしてありがとう。


「うん、うん。ごめんなさい。もう無茶はしな

いね。戦う時は皆んなと一緒に戦う。だから

泣かないでよ〜」


「……戦うの前提なんですね。戦わない選択は無

いのですか?そして私は泣いていませんが!?」


……泣いてるよ。めちゃくちゃ泣いてるじゃん。

でも認めたくないのね。そこがエドの可愛いと

こなんだよな〜。エドの泣き顔初めて見たし。

とても貴重だ。今後見れるか分からないから

ガンガン目に焼き付けとこ。

しっかりしている様でまだ12歳だもんね。

あっ、夏生まれって言ってたからもうすぐで

13歳?


「う〜ん。あのねエドに言おうと思ってて中々

2人きりになれなかったから言いそびれてたんだ

けど私この世界でやらないといけない事が少し

分かった様な気がするのね。それは多分戦いとは

切っても切れない事なんだと思うのよ。もう少し

はっきりしたらいいのだけど……」


「……それは私もなんとなくそんな気はしてい

ます。実は私もその事に関して思うところが

ございまして。こちらもはっきりと確信が持て

たらお伝えしようと思っております……」


へ?そうだったの?気になる。

そんな今言って。

確信とかいいから今直ぐに言って欲しいぞ。


「ソウデスカ……ワカリマシタ……」


あまりにも聞きたすぎて棒読みになちゃっ

たよ。


「あのう、お嬢様……『シャテイ』とは

なんでしょうか?この言葉だけとても

強く記憶に残っているのですが……」


はふぅー!ピンポイントだな、おい!


「異世界語ですよね?」


「うん。1番信頼してる大切な仲間……

って意味かな〜?」


個人的見解です。はい。


「信頼……大切な……そうですか……」


ん?エドが嬉しそうなんですけど?

エドが嬉しそうにしてると私も嬉しいよ。

ふふふ。


「お嬢様ぁぁぁぁぁーーーーー!!!」


幸せ気分をぶち壊す大きい声が聞こえた。

メアリーが遠くから凄い勢いで走って来る。


ギャァァァァーー!!怖い。メアリーが

怖すぎる……。

目が血走ってて髪の毛振り乱して。いや、

全部私のせいだよね。ごめん。


「やはりエドの所でしたか!!」


うぁぁぁ。怒ってる。めちゃくちゃ怒ってる。

その後メアリーに引きずられて本宅に戻った

のだけど今度は軟禁ではなく監禁状態に変わっ

てしまった。ホント溺愛って怖いな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ