脱走②
そんなわけで24時間監視付きの軟禁生活。
いつ脱走出来る?
昼間は家族の誰かが一緒に居ない時間でも
メアリーがベッタリだ。
メアリーの他に10人程メイドさんや護衛騎士様
が部屋のドアの外に居て難しい……。
ぬぉぉぉぉぉーーーー!
これは1人になれる場所はあそこしかないのだ。
そう、トイレだ。
トイレの窓は小柄な私なら出られる。
しかし自分の部屋は2階なので1階のトイレに
入らなければならない。
よし。やるぞ。やってやる。
少しだけ、少しだけ外に出して。ね?
屋敷の敷地内だし。許して。
ちょっとだけ罪悪感はあるもののエドに会いた
い気持ちの方が勝る。
「メアリー?私、少しこちらに寄りますわ」
昼食が終わり1階にあるダイニングルームから私
の部屋へ戻る途中でトイレに行く事に成功した。
ふふふ。トイレの窓から簡単に脱走成功。
ん?こんなに簡単に成功して大丈夫なのかな?
逆でトイレの窓から侵入出来んじゃない?
ま、とりあえず星の宮を目指して走れ〜!!
夏だ……。暑い……。私汗だくよ。
しかし相変わらず広い土地だ。まだ着かない
のか?私は全力疾走。はぁはぁと息が上がる。
まだ体力がもどって無いと実感するな。
すると目の前に大きな建物が出てきた。
これか?これが星の宮?勝手に屋敷を想像していた
のだけど塔だった。しかも半端なく高い塔だ。
これ……。1番上にエドが居たら私の体力じゃ
無理じゃね?エレベーターとかエスカレーター
とかないから当然階段だし。泣きそう。
入り口を探していたら綺麗な庭を発見した。
いろんな種類のお花が咲いている。
奥の方にガゼボがあって誰か座っていた。
ん?ん?んーーー?よく見るとあれはエドだ!
エーードォォーーーじゃーーーーん!
周りに誰も居ないことを確認し私は走り出した。
「エドーーーーーーー!!!」
「!?」
驚いているエドに勢いよく抱きついた。
「お嬢様!?何故こちらに??」
「エドに会いに来たんだよ〜。
脱走してきちゃった」
「脱走!?」
「うん。だってずーと部屋から出してもらえ
ないし、エドに会いたいって言っても会わせて
もらえないし」
エドは抱きつきながら話す私の両肩を掴み
自分の体から私を離した。
「お嬢様!私はまだ完治しているか検査中なの
です。距離を取って下さい。本来ならば会っても
いけないのですよ?」
いつも冷静なエドが焦ってる……。
そして顔が真っ赤だ!何で!?
おばちゃん心配だ!
「エド!?具合悪いの?顔が真っ赤だよ!?
熱でもあるんじゃ……」
私は孫っちに熱がないかを測るやり方でエド
の頬を両手で包み込んで顔を近づけた。
額と額をくっつけようとした瞬間。
ギギギーーーと音がしそうな動作でエドが私の
両手を掴み自分の頬からゆっくりと離した。
「具合は悪くありません!大丈夫です!」
「そうなの?良かった」
うん。一安心。こんなやり取りこの前ルイお兄様
ともしたような……?
デジャブゥゥ〜。
「お嬢様……。あの日、私を助けて下さり、
守って下さりありがとうございました……
いくらウイルスに感染したとはいえお役に
立てず……」
エドは深く頭を下げて私に言った。
「いや、私でなく結果的にルイお兄様が助けて
くれたから。そしてあれは元レディースの血が
騒いじゃって……」
「しかしルイ様が来てくれるまでお嬢様が
私を守って下さいました。感謝いたします。
……モトレディースとは?異世界語ですか?」
「あ、うん……そう、異世界語。気にしないで!
ホントあのウイルス腹立つね!わざわざ新種
作るなってんの!」
話を逸らす……。レディースを説明するのも
なんだしな……。
「エドの顔に斑点が出た時ホントびっくりし
たんだから……」
「私もメアリーにお嬢様がどの様な状態で
お戻りになったかを聞いて心配しておりま
した……あの時のことは殆ど記憶にないの
です……」
メアリーは会いに来てるんだ。
えー!ずるーい!
エドはガゼボのベンチに座るよう私に
誘導する。
可愛い木のベンチだ。
私が座るとエドも隣に座った。
「記憶なくていいよ。あんな無様な姿
恥ずかしいもん」
「無様など!あのように美しい戦い方
誰も出来ませんよ!?」
記憶……あるじゃん……。
「あぁ……いえ、最後の枝で戦ってるところ
だけです……自分の魔力がきちんと枝に作用
しているか集中して見ていたので……少しだ
け記憶に残っているのです……」
あっ、私今、顔に出てた?
流石エドだ。私の不機嫌オーラ察知能力が
発動したか。
ごめん、ごめん。
「私こそあの時は本当にありがとう。エドがあん
な状態なのに頑張って魔力使ってくれたのに私、
ボロボロだったよね。情けないなぁもっとカッコ
よくビシッと決めたかった」
「あの戦い方は?お嬢様は訓練などされていない
のにあれだけ戦えるなんて不思議です。私の記憶に
は残っていませんが枝を使う前も戦っていたの
ですよね?」
おっと。そこきた。そうだよね。ここは素直に
白状します。
「あれは自己流。前世で色々あって私、戦える
の」
すっごく端折ちゃったよ。
説明が面倒くさいとかじゃない……。
いや……やっぱり面倒くさいわ。ごめん。