脱走
「エドはどうしているのかしら?
まだ体調悪いの?」
メアリーに訊ねてみた。
あの事件からかなり経っているのにエド
が復帰してこないのだ。
「体調は良くなったと聞いております。
今は離れの『星の宮』で色々と検査中だそう
です」
「検査……?何のですの?」
「あのウイルスは魔力で作り出された悪意の
塊のような物だそうで初の感染者のエドは
ウイルスによる体や魔力への影響などを
検査しているそうです」
「そうなの……。大変ね……」
「はい。ですのでこちらに復帰出来るには
まだ少しかかるかと……」
そうかぁー。そうなんだぁー。
元気になってるのなら安心なんだけどー。
でもちょっとだけ会いたいな……。
私、魔力無しだしワクチンも打ったしエドに
会っても良くない?
って事で早速レオンお父様にお願いしてみた。
「もう少し様子を見てからだな。まだウイルスが
人体にどんな影響を与えるのか分からない事が
いくつかあるからな」
「でもエドの体からはウイルスは無くなった
のでしょう?それなら大丈夫ではないのですか?」
「今それを調べているのだ。エドの体に一欠片も
ウイルスが残っていないかを。あのウイルスは
とても巧妙に作られているからね。ルイから作っ
たワクチンもどれだけの効果があるのか未知数
なのだよ?だから今は会わせられない」
むぅーーー。私の頼りないカンだけど絶対に
移らないような気がするよ?根拠は無いけど。
その自信は何処からくるのかって話よね。
だってやっぱりあんな青い斑点顔を見ちゃってる
から心配じゃん。あの綺麗なお顔に斑点が残って
ない?とか、あんなウイルスにやられてる時に
頑張って枝に魔力注いで変になってない?とかさ。
で、『星の宮』に居るってことなんで私は脱走する
ことにした。脱走……。ワクワクするな。
が、しかしここのところずぅーーーと家族の誰かが
一緒なわけで……。
実は夜もローズお母様が私のベットで一緒に寝て
いるのだよ。これはルイお兄様が悪いのだ!
最初にルイお兄様が私の部屋で寝ると言い出した。
いつ、また私を攫いに来るか分からないから夜も
1人にできないって言って。
勿論一緒のベットではなく簡易ベットを持ち込んで
部屋の隅っこで寝ると。
いや、いや、私のプライバシーはどこ行った?
寝る時まで誰かと一緒って……。
しかし14歳の女子と17歳の男子が……ね?いくら
同じベットでなくても同じ部屋でって……。
ヴィンセット夫妻が猛反対さ。
助かった〜。
しかしルイお兄様は私が発作を起こした時に
ノアが一晩一緒に寝たではないか!と反発した。
あれはノアがまだ13歳だからローズお母様的
にOKだったらしい。それに今回は一晩ではない
でしょう?って事になり……。
13歳でもあの夜は結構な大人だったけどな!
一瞬色気に殺られそうになったけどな!
それは言わないでおく。
それを聞いたノアは俄然張り切り出した。
僕が夜一緒に居ると。
はい。そこはレオンお父様とルイお兄様2人の
殺人鬼の様な笑顔で却下。
その後直ぐにレオンお父様がだったら私が……と
言い出した。即ローズお母様に却下されてまし
たけど。
それでローズお母様でって事で落ち着いたわけ
です。
が、しかし……。1人でいいよぉ〜。
この屋敷なら私の部屋に侵入してくる前に仕留めら
れるでしょう?レオンお父様とかルイお兄様が。
だから1人にさせて……。
願い虚しくローズお母様と毎夜寝る事となったの
である。
しかし良い事が……。
恋バナ大好きローズお母様。毎夜レオンお父様との
恋バナを1つ語ってくれるのだ!勿論レオンお父様
には内緒だ。これがまた物語の様に素晴らしい。
いつか本にして発売したら売れるよ〜。