教会にて④
「よし。いい子だ」
私はエドの頭を軽く撫でてから庇うように
立ち上がりマッチョなおっさん達と向き合っ
た。
「私の可愛い舎弟に指一本でも触れてみろ。
秒で殺す」
マッチョ達を睨みながら言った。
「あははは。殺すだとよー」
「殺されるぅ〜の間違いじゃねーの?」
ざわざわと笑い声に混じって馬鹿にする言葉が
聞こえてくる。
「おーい。助けは期待しない方がいいぞー?
お前の兄貴とやらにも同じウィルス使ってる
はずだから今頃はおっ死んでるんじゃ
ねーかー?」
①だか②だか③だか分からないけどそんな
声が聞こえてきた。
ふっ……。コイツらルイお兄様の凄さを全然
分かっとらんな。絶対に大丈夫だ。
多分……な。
「よぉー。もうとっとと捕まえて美味い酒でも
飲みに行こうぜ」
「おお〜そうだな」
「いや……そんな簡単には済ませたくねーなー
コイツ俺らと同じで魔力無しのくせにこんな
いい服着てよー美味いもん食ってんだろう?
許せね〜」
その言葉を聞いたマッチョなおっさん達の雰囲気
が一気に変わった。私に対する憎悪が明らかに増す。
でもこれで分かった。マッチョなおっさん達は魔力
無しだ。よし。頑張れるかもしれない。
「そうか〜そうだよなぁ〜。魔力無しでもいい
家に生まれればこんないい暮らしができるん
だもんなぁ〜」
「やっぱ殺すか」
「おーと!殺すなよ?生捕り依頼だからな」
「……息さえしてればいいんじゃねーの?」
「じゃあ半殺しだな」
あ……。確定したんだね?半殺しって事で
ファイナルアンサー?
マッチョなおっさん達の目がギラギラしはじめ
た。きっと魔力無しだからって差別されたり
酷い事されたりしたんだろう。
自分達と同じ魔力無しの私が何不自由なく生き
ているの事に腹が立つといった感じかな。
分からなくもない。これが反対の立場なら私
だって腹が立つのではないだろうか?
だけど半殺しってのはちょっと違うと思う。
ぬっと横から伸びてきた手をバシッと払う。
そして私の足が宙を舞いそのマッチョな
おっさんの顔面を蹴り上げた。
マッチョなおっさんは小さな私に合わせるよう
に屈んでいたせいでモロに足が入り鼻血を出し
て倒れた。
それを見ていたマッチョなおっさん①が
ニヤニヤしながら言った。
「かっかっかっ〜。何も出来ない弱ちーガキ
だって聞いてたけど少し違うようだな……」
その言葉を合図にマッチョなおっさん達が一斉に
殴りかかってきた。
私は次々とその攻撃を腕で防御して躱しながら
反撃し打ち込んでいく。
後ろにはもう殆ど意識の無いエドが居る。
私が倒れるわけにはいかない。絶対に。
殴り合っているうちに1人のマッチョなおっさん
の蹴りが私のお腹に入った。
「ぐふっ……」
お嬢様らしかぬ声を出して私は体をくの字に
曲げた。そこにマッチョなおっさん達が殴る蹴る
してきた。いわゆる『袋叩き』だ。
これはヤンチャしていた時に散々やられていたか
ら慣れてるわ〜。殴られ慣れているわ〜。
まさかのヤンチャしていた頃の経験がこんな所で
役に立つとは……。
でも慣れてるとはいえ痛いわ〜。
きっと最初の蹴りであばら骨が折れてる。
前世で折った時と同じ痛みだ。
折れてると下手には動けない。変に動くと肺に
刺さる事があるから。
だけどこのままでは殴り殺される。