教会にて③
「あーははは!こりゃ面白れーー!おい
ちっこいの!お前本当に魔力無しなんだな!」
「え?」
魔力無し……。私が気にしてる事をよくも
はっきり言ってくれたな!
マッチョなおっさん①がまた「かっかっかっ」
と笑いながら近寄ってきた。
それに気が付いたエドがふらふらになりながら
立ち上がり私を後ろに隠す。
「この煙はなー魔力持ちだけに感染する
ウィルスなんだよ。この小僧死ぬぞ〜
かっかっかっ〜」
そう言ってやっと立っているエドを平手打ち
して吹っ飛ばした。
「エド!!!」
私は叫びながらエドの元へと走った。
倒れているエドの上半身を抱きかかえ顔を
見ると青い斑点が浮き上がっている。
ウイルス……。
魔力持ちだけに感染するってことはマッチョ達
は魔力無しか?ガスマスクとかしてないし。
でも……もし依頼主が魔力が強かったらマッチョ
全員にウィルスに感染しないよう魔法がかけられ
てる可能性もある。
戦ってみて確かめるしかないか。マッチョが
魔力持ちなら私なんて直ぐにやられちゃう
だろうけどエドを守らないと!
マッチョを見てると計画的犯行だろうから今頃
ルイお兄様も誰かと戦っているはず。そうでな
ければこちらに来てると思うし。
ルイお兄様は強い。だから負けるはずはない。
エドを助けるにはルイお兄様が来てくれるまで
時間稼ぎをすれば何とかなる。うん。よし!
私は一瞬にして考えを巡らせた。
はっと気がつくとマッチョなおっさん②が私を
エドから引き離し始めている。
片腕をブンブン振り回して抵抗していたら偶然に
も一発顔に入ってしまった。
「このヤロー!!!痛いじゃねーか!!!」
カッとなったマッチョなおっさん②に腕を掴まれ
無理矢理引きずられてエドと離され顔を殴られる。
その勢いで私は横に吹っ飛んだ。
とっさに空中で受け身を取り衝撃を最小限にする。
ザザーーと横滑りして地面に着地するも足が地面に
擦れ所々から出血した。
口の中も切れて血の味が広がる。
凄い!この体!空中で受け身を取れるなんて
身体能力が恐ろしく高い。前から思ってたけど
これなら時間稼ぎ出来るかもしれない。
……口に広がる血の味、殴られた痛さが10代で
ヤンチャしていた頃に引き戻される。
このマッチョやろーめ!
元レディースなめんなよ!
マッチョなおっさん達が私を捕まえようと一斉に
襲ってきた。それを躱しながらエドの所へ戻り
意識を失いかけている彼に向かって言った。
「エド!いいか?私より先に死ぬことは許さん。
分かったか?これは命令だ」
ん?んー?私の声よりワントーン低い声が出た。
この話し方も私じゃない。勿論ヤンチャしていた
頃の話し方でもない。
私であって私ではない誰か。
それを自覚した時頭の中でカチャリとスイッチ
が入ったような気がした。
続けて話しかける。
「ルイお兄様が必ず助けに来てくれる。それまで
耐えろ」
エドは一瞬驚いた顔をしていたけど私の言葉に
小さく頷いた。