悪夢③
『ぎゃぁぁぁぁぁーーーーー!!』
先程の悪夢を見た時と同じぐらいの叫び声を
心の中であげた。
いかん、いかーーーーん!これはいかんぞ!
私はノアから離れようと必死にもがいた。
しかしノアの腕ががっしりと私を抱き込んで
いるので身動きが出来ない。
学校で剣術の訓練も受けているからだろうか?
とても13歳とは思えない力だ。
寝返りが出来なかったのもコレのせいか……。
「ん……。姉様、気がつかれましたか?気分は
どうです?息は楽になりましたか?」
月の光が差し込む幻想的なベットの上で
ノアの綺麗な顔が近づいてきた。
待て、待て、待てぇぇぇーー!
私よ、落ち着け!
このシチュエーション、ダメじゃないか!?
月の光りと天使なノア。
2人でベットの中……。
こんなロマンチックな……。
もう一度、落ち着け、私!
落ち着かないと鼻血とヨダレと色んなもの
が出まくるぞ!
「ノア、私を助けてくれてありがとう」
とりあえず会話でもして落ち着け作戦だ。
「助けたなんて大袈裟ですよ。少し呼吸を
楽にする光魔法をかけただけです」
「まぁ!そんな……申し訳ないわ。ノアの
体調は大丈夫ですの?」
ノアはため息をついて私をじっと見る。
「姉様?いいですか?僕は姉様が思ってる
より光魔法の力は安定してるしこれぐらいの
力では疲れたりしませんよ?そして僕のこの
力は姉様だけの為にあるのです。姉様に使う
のは当然です。だから謝らないで下さい」
『姉様だけの為にある』
おーと!!それ、皇帝や神殿が聞いたら
私、即排除されるやつな!!
「ノア、そんな事言ってはダメだわ。その
貴重な力は国の為に使わなくては……」
「僕は姉様以外にこの力を使う気なんて
更々ないですから」
え?せめて家族にも使ってあげてぇ〜!
ニッコリと微笑みながらノアは私の顔を
両手で包み込んだ。
そしてうっとりしながら私の頬や耳、
唇を優しく触ってくる。
これアフロなおばちゃん的には完全に
アウトですね。
はい。死刑判決が下されました。
私はノアのその手を振り払ってベットの
上にガバッと立ち上がった。
驚いたノアを見下ろしながら
「も、もう私、落ち着きましたし大丈夫
だと思いますので……。ノアも疲れたで
しょう?自分のベットで眠った方が疲れが
取れますわよ?」
ノアは疲れてないって言っていたけど
私の都合で無理矢理疲れた事にする。
だって先程、死刑判決が下ったのでここ
まででホント勘弁願いたい……。
かなり焦っていたせいもありベットが
ふわふわで柔らかだったこともあって
私の足元がグラついた。
後ろに倒れればよかったものをよりに
よってノアの上に倒れ込んでしまった。
必死に押しつぶさないようベットに手を
ついて自分を支える。
その態勢がいわゆる床ドン。いや、ベット
の上なのでベットドンか……。
ノアの顔を私の両腕が挟んでいる。
どう見ても襲っている。と、思った瞬間
またまたベットの柔らかさに左手がかくん
となりノアの右頬に私の唇が触れた。
はい。先程、死刑判決が下ったばかりですが
即死刑執行です。市中引き回しの上、打首
です……。さようなら……。
私は秒で起き上がってベットに座り両手で
口を隠した。
「ご、ごめんなさい。その、手が、かくんっ
てなってしまって……」
必死で弁解!とりあえず弁解!
きょとんとしていたノアの表情が妖艶な微笑み
に変わった。え?天使なノアなのにそんな
色っぺーお顔も出来ちゃうの!?
やっぱりルイお兄様の弟だわぁ……。
「今のは姉様からのご褒美ですね?嬉しいです。
あぁ……もう少し顔を右側にずらしていれば
ここにご褒美もらえたのかな〜」
と、自分の唇に人差し指を当てた。
いや、ちょっ……。ノアさんよ、あーたまだ
13歳よね?良いのかい?そんな感じで良い
のかーーーーい!?
戸惑っているとノアに右腕を引っ張っられて
そのまま抱き枕のように抱え込まれた。
「光魔法使って疲れちゃった。自分の部屋まで
行く元気が無いのでこのまま姉様のベットで
眠らせて下さいね」
そう言ってぎゅーとしてきた。
ひぃぃぃぃぃーーーーー!嘘つき!さっきは
疲れてないとかなんとか言ってたじゃん!
あっ!私か!私が無理矢理疲れた事にしてし
まったんだ!
そんな妖艶な微笑みでぎゅーとかしない
でー!と、ぐるぐる考えていたのだけど
ノアからいい香りがしてきて突然に頭が
クラクラしてきた。
この香り……。ヴィンセット家の男性は皆んな
同じ香りがするんだよな〜。安心するような
癒されるよう、なそして元気になるような。
ノアが1番香りが強い……。
ふぅー。もうなんの抵抗もできん。
私はその香りに包まれてまた眠りに
落ちていった。