古本屋
お店に入ると薄暗い中に所狭しと本棚が並
んでいた。
洋書のようなハードカバーの本がびっしり
と詰め込まれいる。
「うわー。こりゃ本格的な古本屋だ」
私はそう呟きながらチョロチョロと店内
を見て回る。
ふと1冊の本を手に取った。
こちらもハードカバーでしっかりとした
本だ。表紙は日記帳みたいなデザインに
なっていて結構分厚い。
持っていると手に吸い付くような変な
感覚。何だろう!?
「お嬢さん。そちらをお気に召しました
かな?」
突然お店の奥から声がした。
「うっ……おっ!」
驚いた。ホント驚いたぞ!
しかも「お嬢さん」だって!?
お前の目はどーかしてるぜ!!!
声がした方向を見るとカウンターがあって
その奥に品の良いご老人が座ってる。
あっ!外国の方?
日本語お上手ですね〜。
「あっ、いえ、何ていうか手から離れない感じ?
……何言ってるんだろう……すいません」
私は本を元の場所に戻そうとした。
「いや、いや、その本が貴方を選んだのですよ
どうか連れて帰ってやって下され」
そう言いながらご老人はカウンターから出てきて
私の前まで歩いて来た。
「え?でも私、洋書は……英語とか読めませんし」
その本をめくりながらそう言った私は手を止めた。
なんと中は日本語だった。
めちゃくちゃ外国ちっくな外見なのに……。
「はっはっはっ!日本語なので読めますな」
ご老人豪快に笑うなー。うー。恥ずかしい。
「5円です」
にこにこ笑顔のご老人。
こんな高そうなハードカバー本が5円だと⁈
「5円ですか?」
私はちらりとご老人を見た。
「はい。5円ですよ」
ご老人から神々しい光が放たれているかのように
眩しいのですが。
5円だよ。買えよ。てな圧が笑顔から伝わる。
私はお財布から5円を出して渡した。
丁度5円があって良かった……。
ご老人はその5円を受け取りながら
「貴方とはご縁がありますように」
と言ってにっこり笑った。
………貴方とは!? 私とご老人がって事!?
え?え?ご老人ってば私が好みだった⁇
そりゃご老人から見ればおばちゃんの私でも
若いよね……。
でも若い頃から20キロ近く体重も増え、髪に毛
なんて扱いにくいクセ毛だからパーマかけて
少しでもお手入れ楽にしようと思ったらかかり過ぎ
てパンチになった。それが伸びてきて今やアフロ
みたいだし。
そんな私のどこがいいの?
もしやデブ専……。じゃなくてぽっちゃりさん
好きなのかな?てか、ご老人!!日本人では
ないのに5円とご縁の語呂合わせよく知って
ましたね!?素晴らしい!!!
ヒュー。
「わぁ!寒い!」
風が私のアフロを揺らした。
はっと気づくと外に1人で立っている。
あれ?いつ古本屋を出たんだっけ?
キョロキョロしながらお店を探すけど見当たらない。
むむむむーーーー。
狐に化かされたのか⁇
しかし両腕が5円で買った本をしっかり抱きしめて
いる。うーん。わからない。でもいいや。
深く考えるのはやめよう。
この年齢になると多少の事はどーでも良くなる。
私だけか?
さて、コンビニでビールとおつまみでも買って
早速この本を読んでみようか。
私はコンビニの明るい光が差す方へと歩いて行った。
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