悪夢②
「ぎやぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!」
私はこんなに大きな声が出るのかって
ぐらい叫んだ。
目を開けると全身汗だくになっている。
ベットの上でガバッと上半身だけ起こし
はぁーはぁーと呼吸を整える。
すると部屋のドアが勢いよく開いた。
私は身構えてドアの方を見る。
「姉様!大丈夫ですか!?」
ノアの叫ぶ声が静かな部屋に響いた。
「……ノア?」
私は額から流れ落ちてくる汗を拭った
手に目を落とす。小刻みに震えている
両手をジッとみていたらじわじわと
恐怖が襲ってきた。
すると目の前が白く濁って見えて自分の
手がよく見えない。
「ノア!わ、わ、私の……指は……どうなって
……ある?食べられて……!!」
指や腕がどうなっているのか確かめて
欲しいのに上手く伝えられない。
夢が怖すぎて。生々しくて。
「姉様、落ち着いて。大丈夫だから。怖い
夢見たの?ほら、僕がいますよ!側にいる
から!」
ノアが震える両手を優しく握ってくれた。
「うっ……うっ……ノア……怖い、怖いよぉぉ
うぇっ……うぇぇーーーーん!うっうっ」
私は恐怖に耐えきれなくなりポロポロと涙を
こぼす。
「ふぐっ!ぐっ!?」
突然に息が苦しくなった。上手く息が吸えない!?
ヒューヒューと変な音が喉から漏れる。
「姉様、落ち着いて。いいですか?ゆっくり息を
吸って……うん、そうです。そしてゆっくり息を
吐いて……そう、そう。上手。それを繰り返し
て。ゆっくりだよ?」
ノアは私の両肩を掴んで支えながら耳元で優しく
囁く。必死に言われた通りにしてみるけど上手く
出来てるのか出来てないのか分からない。
大きく見開いた私の瞳から涙が溢れ落ちる。
ノアが私を引き寄せ抱きしめるように背中に手を
回しゆっくりとさすってくれると少し呼吸が楽
になったような気がする。
頭がクラクラして意識が朦朧としてきた。
「エド、父上には僕がいるから大丈夫だと伝え
て。メアリーは温かいタオルの用意を。そして
この部屋には誰も入れないように」
ノアのテキパキした指示が飛ぶ。優しくて可愛い
声なのにやはりヴィンセット家の次男なんだな。
しっかりと命令してて素晴らしい……。
エドもメアリーも来てくれてたんだ……。
そんなことを薄っすらと考えていたけど私の意識
はまた深い闇へと引き込まれていった。
どのくらい眠っていたのだろう?
意識が戻った私は先程の苦しさが嘘のように
治っていてホッとした。
今は何時ぐらいだろうか?
まだ暗い。窓から入る月の光りが部屋の中に
差し込んでいる。部屋の中を照らし出す光り
は幻想的な空間を作り出す。
なんか素敵だなぁ……。
寝返りを打とう思ったが体が何かで固定され
いるみたいに動かせない。
「ん?」
顔を右横に向けるとそこには天使なノアの
綺麗な寝顔があった。