初めてのお出掛け⑥
そんなことを考えているうちに馬車は
カフェへと近づいてきた。
私は馬車の窓のカーテンを少し開けて
外を見た。
おう!本当に前世での中世ヨーロッパ
の世界だ。素敵だなぁ。って感動して
いたらノアにバシッとカーテンを閉められた。
「姉様!ダメですってば!姉様を他の男に
見られたくないし見たら襲ってきます!」
ーーー……。はい、はい。分かりましたよ。
本気でそう思っているのだね?
ここはお譲りします……。
カフェに到着しノアと席に着く。
エドとジョゼフは少し離れたテーブルに座った。
カフェの店員さんは皆女性だ。後から聞いたの
だけどノアが男性店員は皆んなバックヤードに
行っててと命令していたらしい。
そして貸切にもしていた。
どうりであんな人気店なのにお客さんが私達
だけだったのか!アホな私はその時全然気が
付かなかったよ!あはは!
店内はブルーとブラウンそしてホワイトを
基調としたお洒落な空間になっている。
壁紙がブルーの小花柄で可愛い!
ノアが合図するとスイーツが次から次へと運ばれ
て来た。何!?この世界のスイーツ展覧会みたい
なラインナップ!最高!美味しそう!と目を輝か
せている私を見てノアはご満悦だ。
「姉様の好きそうなスイーツを注文しておきまし
た。好きなだけ召し上がって下さい。ほら!
イチゴタルトもありますよ」
天使が微笑む。
キラキラなスイーツもあり天使も居てここは
天国なのか?
「ありがとう。嬉しいわ」
私はここに来る前に最初イチゴタルト!中間で
イチゴタルト!最後のシメにもイチゴタルト!
と決めていた。計3つは食べる予定だ。
どんだけ好きやねん。イチゴタルト。
ノアのお皿を見ると紅茶のシフォンケーキに
生クリームが添えてある。
「あら!ノアのも美味しそうですわね?イチゴ
タルトの次に注文しようかしら?」
私はウキウキである。
ふふ〜ん♫と鼻歌まじりでイチゴタルトを
頬張っていると
「姉様、はい。どうぞ」
と言ってノアが自分の紅茶シフォンケーキを
一口サイズにしてフォークに刺し私に差し出し
てきた。いわゆる『あーん』だ。
「お味見どうぞ」
にっこりノアだ。
ほぇぇぇーーー!神々しい……。
有り難くなってつい拝んでしまいそうだ。
で、いいの?私既にルイお兄様からの
フーフー攻撃で『あーん』にはめちゃくちゃ
耐性あるよ?
「ありがとう。頂くわ」
私は躊躇なくパクリと食べた。
わぁー!美味しい!やっぱり次はこれに
決めた!
もぐもぐしながらノアを見ると……。
ひっ!!!
何故?何故にそんな泣きそうな顔を!?
『お味見どうぞ』はただのポーズだったのか!?
私が断るの前提だった!?
わぁー!どうしよう!!
キモイ姉でごめんよ……。
いや、本当にさ……。そのフォーク新しいのと
変えてもらってくれ……。
「姉様が……。姉様が食べてくれた……。前に
何度もお味見どうぞしたけど全部断られて
……た……から……。嬉しい……」