バルガー村②
「レオンお父様、私行きたい場所があるの
ですわ」
ユーリ邸から帰ってきた日の夕食時に早速
話てみた。
だって善は急げでしよう?
善なのかはまだ分からないけど。
因みにレオンお父様の前ではついついお嬢様
言葉になる私。
レオンお父様は異世界語でいい、寧ろ異世界語
で話て欲しいって言ってくれるんだけど
あんまり異世界語ばっかり使ってるといざって
時にお嬢様言葉が出てこないと困るからね。
「行きたい場所?」
レオンお父様がメインディッシュのステーキに
ナイフを入れながら私に聞き返した。
「はい。もしかすると『女神の剣』と関係がある
かもしれませんわ。私の勘なのですけれど」
「『女神の剣』?今まで何回もアダン殿下達と
場所の特定を相談していたけれど全然見当も
つかなかったのにかい?」
ルイお兄様がワインを飲みながら顔を傾げる。
カッコよっ!!その傾げたお顔だけで何杯でも
ご飯食べれるわ!!この世界にお米が無いのが
悔やまれる!!
「それが、前までは何かこう......漠然とした感じ
しかなかったのですけれど『悪魔の鏡』を持って
帰って来てからある場所が凄く気になるように
なりましたの」
前から気になってはいた場所だけど更に気になり
出したのだよね。悪魔の鏡と女神の剣って
ツイになってるのかな?
「あ、姉様、それって......」
ノアがパンをちぎりながらハッと気がついた様に
私を見た。
「そう、レオンお父様が治めているバルガー村の
シューピル教会ですわ。女神様が一番最初に
建てた教会なんですわよね?」
「バルガー村か。先月も視察で行ったばかり
だ。なるほどな。その教会に隠してあるかも
しれないとディアは思っているのだな?」
「まだハッキリとは分かりませんがとてもその
教会が気になるのです」
「よし。分かった。明日にでも出発しよう」
レオンお父様が執事さん達に旅行の準備の指示を
出し始めた。
「残念だけれど私とお父様は一緒には行けないわ。
代わりにルイとノアが一緒に行ってね」
和かにローズお母様が話に入ってきた。
ですよね。お祭りだし。
「ローズ?何を言っているのだ?この様な大切な
用事なのだ。今回の祭り、私は欠席で......」
「あなた?あなたこそ何をおっしゃっている
のかしら?お祭りは私達にとって大切な行事
ですのよ?」
「出席するのはローズだけでもよいではないか?」
「......あなた?あのお祭りに『妻』だけが出席
するとどうなりますの?私は毎年ヴィンセット家
を守る為に戦いに行っているのですわ。お分かり
でしょう?夫婦揃っていないとどうなるのか......」
ローズお母様の声が低い。
これはデジャブだ。ユーリ邸で同じ事があったな。
そう、表向き神様に感謝するお祭りなのだ
がノワール、ブロン、その他貴族様達が集まる
ので実は自分達の一族が素晴らしいかを競う場
でもあるのだ。
要はマウントの取り合いだ。
他のノワールに軽く見られないように夫婦で参加は当然だし、なんなら自慢の息子や娘を連れて来る
貴族もいる。
普段は仲のいいノワールやブロンも何故だか
このお祭りだけは様子が違うらしい。
怖っ。何なんだ一体。日頃のストレス発散なの
かな?
「それならば祭りが終わる1週間後に行くのは
どうだろうか?」
レオンお父様が食い下がる。
「父上、お祭りで賑わっている隙に
行くのがよいかと。ディアが女神様だと知られ
ないように一般の民としてお祭りに紛れて
村に行くのです。あの村は女神様が最初に
建てた教会があるものだから病的な女神様信仰
があるのは知っていますよね?
下手に騒がれて魔王や悪魔に気付かれたら厄介
ですから」
ルイお兄様!ナイスな考えです!
でもレオンお父様はどうしても一緒に行きたい
らしくブツブツと何か言ってる。
「そうですね!兄上!逆にお祭りの今、行く
方が良いですよね!」
ノアも納得らしい。
レオンお父様もう諦めましようね。