僕の愛しい人⑧
そうかぁ。アクアは大切な聖女様と一緒に
悪魔と戦ってるんだね。私も頑張らねば。
そのうちそっちの次元に魔王が行ってても
こっちに送り返して!って言ちゃったもんね。
「え!?そうなのか?そりゃまた大きく
出たもんだ。それでこそディア姫なんだが
な。あはは!」
私キルア様が大きな声で笑った。
「「「え?何が?」」」
ルイお兄様もノアも悪魔までがその言葉に
反応しとる。
「何でもねー。これは俺とディア姫との
秘密だ。さてもう終わらすぞ?」
そう私キルア様は叫んで悪魔への攻撃を強めた。
それに習ってルイお兄様も呪文を唱えながら
攻撃を開始する。
「あーもー!お前達の攻撃はイライラするね!」
悪魔はこの場から逃げたいようだけどそれを2人が
阻止しているみたいだ。
ノアがじっと悪魔の右ふくらはぎを見ている。
ちょこまかと動く悪魔に近寄るのを止めたよう
に見える。
剣をしまい両手を前に出した。
「エルフの国の月の神よ。私、太陽神の愛し子
に力を……」
そう呟くとノアの両手の中に月の様な丸い金色の
発光体が現れた。
「キルア様!兄上!3秒で良いので悪魔の動きを
止めて下さい!」
「「分かった!」」
2人はハモると一斉に悪魔へ拘束のシールドを
張った。2人のシールドの強さに流石の悪魔も
一瞬動きを止める。
その瞬間にノアが金色の発光体を悪魔の右ふくら
はぎに向かって飛ばした。その発光体が悪魔に
ぶつかる寸前に2人はシールドを解除する。
シールドがあると跳ね返してしまうからだね!
発光体は見事に右ふくらはぎに命中した。
「ぎゃっ!」
悪魔は短い悲鳴を上げてその場から消滅した。
勝った……?勝ったのかな!?
消滅したって事は殺したって事だよね?
キルア様の仇は取れた?いや、私がやったのでは
なく3人がやったんだけど。
「……殺ったか?」
私キルア様は小さく呟いた。
「多分……殺った」
ルイお兄様がそれに答える。
「ノア!よくやった!お前は本当に太陽神の
愛し子だな!」
私キルア様はノアに向かって言った。
「ノア!素晴らしかった!」
続いてルイお兄様も絶賛だ。
「いえ……お2人の協力が無ければ僕など……」
「謙虚だなー。ここは自慢しろよ」
私キルア様はノアの肩をポンポンしながら
微笑む。
「……ですから、今は姉様の姿なのですから
その微笑みは……」
ノアが顔を真っ赤にして俯いた。
大丈夫か!?力の使いすぎじゃないの!?
あ!さっき腕も切られてたし!
「あはは!相変わらずのディア姫節だな。
鈍感は何年経っても変わらずか!」
なぬ!?
「ルイ、ノア、俺はもう行く。お前達と
ディア姫を一緒に守れた事を嬉しく思う。
最後の思い出を作ってくれて感謝だ」
私キルア様は2人をまとめてギュッと抱きしめ
た。けど、私の体は小さいので腕が最後まで
回らない。とほほ……。
「そして2人共、ディア姫を頼む!本当は
俺も……一緒……に……守……」
私キルア様はそこまで言うとガクッとルイ
お兄様とノアに寄りかかた。
「待て!キルアもっと話したい事が……」
ルイお兄様の叫び声が遠くに聞こえた。
宙に浮いている私の視界が白く濁る。
私キルア様の体から力が抜けて倒れ込むのを
2人が抱き抱えているのを見たのを最後に
意識がなくなった。