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山猿④


「ディアはさー。少し前から随分と雰囲気が

変わったよね。父上も母上も女の子はある時期

になったらガラリと変わる子もいるようだと言

っていたけど……」


どきーん!キターーーー!ついにこの話題が!


「前は物静かでディア特有の綺麗な色気があっ

てその色気が垂れ流しされてるものだから少し

会った、少し見た、だけの男達が一瞬で魅了さ

れて心配で心配でたまらなかったのだけど」


おい!言い方な!垂れ流しって!こらっ!

もっと言い方あるだろう!?


「今ではその色気もすっかり落ち着いて前より

性格も明るくなったよね。私とも沢山話して

くれるようになって笑顔が増えたし可愛さ

倍増したのだけど」


そうなのだ。前世の記憶が戻るまでの私は夕食を

食べたら直ぐに自分の部屋へと戻ってしまって

いた様なのだがアフロなおばちゃんになってか

らはヴィンセット家の図書室から色々な本を持っ

てきてここ、ティーラウンジで読むようになった。

この国の歴史やら伝説やらおもしろい本が沢山

あるのだ。


アフロなおばちゃんは本を殆ど読まなかったのだ

けど食わず嫌いと同じだったみたいで読み出す

と本のおもしろさの虜になってしまったのだ。


私が本を読む時間にルイお兄様やノアが自然と集ま

るようになり会話も増えた。

時にはレオンお父様やローズお母様も来て家族

での会話もある。


ルイお兄様やノアとの話題はいつもどんな殿方が

好みなのかだとか結婚したらどんな所に住みたいか

とか子供は何人欲しいのかとかそんなんばっかだけ

どね。


先ほどの『私とも沢山話しをしてくれるように

なった』とはそのことを言っているのだろう。


「え?ええ。この前もお伝えいたしましたけれど

私は変わろうと頑張っておりますの。それを良い

変化とルイお兄様が捉えていてくれてとても嬉し

いですわ!」


はい。私も野生児の笑顔。結構根に持ってますけ

ど何か!?


「そうだね。ディアは頑張っているよ。本当に

可愛い」


おっ?ホラーなルイお兄様から通常モードに戻り

つつあるな。良かった。


「その……山猿の噂が広まってから山のように届い

ていたディアへのお見合いの話しやお茶会、パー

ティーへの誘いなんかも三分の一になったようだ

よ」


嬉しそうに言ったルイお兄様の笑顔が無事にホラー

から天使に……。お帰りなさい。


しかし三分の一って……。0じゃないの?

山猿令嬢なんて誰もお見合いなんてしたくなく

ない?逆にまだお見合いの申し入れしてる殿方

に会ってみたいもんだ!!


は〜。色々と衝撃的な内容ではあったけど

とりあえずバレてはいないようで良かった。


この会話から思うにメロメロなルイお兄様の

恋心は終わったのではないだろうか?

垂れ流しする程あった色気が無くなり野生化

した私は恋愛対象から除外されたであろう。

あれだけはっきりと私を野生児だと言い切っ

たのだし。メロメロな恋心を持っている

相手に普通はそんなことは言わないよね?

ホント色んな意味でごめんなさい。

ルイお兄様……。


でもホッとしている自分もいたりして。

だって私、アフロなおばちゃんだもん。

恋愛からは程遠い。

それに恋愛うふふ。あはは。は暫く私の

中で不要なモノなのだ。


何故ならアフロなおばちゃんの記憶が戻った

時に謎に思った『記憶持ち転生』のこと。

それの解明が優先だ。

実はこの前チラリと戻ったキルア様との約束

の記憶がこの謎を解く鍵になることに気がつ

いてしまったのだ。


9歳の私がした小さな約束から謎が解けていく

予感がしている私はイチゴタルトを口に入れ

決意新たにしたのだった。


そんな時を同じくして王宮では……。


「あれ?兄上、今日ルイ殿は休みですか?」


キラキラした赤い髪に宝石のようなブルーグリーン

の瞳。彫刻かと思うほど整った美しい顔の少年が

第一王子のアダン殿下に話しかけた。


「ああ、イザークか。ルイは休みを取ったのだ」

「そうなのですか」


イザークと呼ばれた美少年は第二王子でアダン殿下

の実弟だ。


アダン殿下も弟と同じキラキラの赤い髪にエメラ

ルドグリーンの瞳だ。今年19歳になる彼は少年

から青年になる狭間の色気を纏っている。

弟に負けず劣らずの美しい顔だ。


「ルイといえばこの前、溺愛している妹君が最近

周りで『山猿』と噂され憤慨していたな……」


アダン殿下がふと思い出した様に言った。


「山猿?そんな噂される程注目されている

ご令嬢なのですか?」


「そうだ。私は会ったことはないのだがそれは

それは綺麗なご令嬢だとか。バターブロンドに

金色の瞳だそうだよ。金色の瞳はこの国では殆

ど見かけない希少な色だ」


アダン殿下は何かを思い出す様な遠い目をしな

がら話しを続けた。


「ルイも言っていたのだが妹君は幼い頃から

体が弱く長らく屋敷に篭りっきりだったのだ

が今では山の中を走れるぐらいに元気になっ

たようだ」


「山の中を……」


イザーク殿下は小さく呟いた。


「そのご令嬢は突然に変わったのですか?」

「ルイから詳しく聞いてはいないが噂では

そのようだ」


「バターブロンドの髪に突然変わった性格

か……」


イザーク殿下がニヤリと笑った。


そんな美しい王子達の話題になっていると露程も

思っていない私は口に付いた生クリームをルイお

兄様に拭かれていた。


イザーク殿下が私が読んでいた物語の登場人物に

はいない人だと気がつくのはまだ少し先だ。


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