僕の愛しい人④
「それにしてもお前、よく僕の居場所
が分かったよね?追跡出来ないように
してたんだけど」
「僕は姉様の居場所は常に認識している」
「へぇ……。それも太陽神から貰った
力かな?」
「……?違う。ヴィンセット家の男性は
皆んな分かるよ?」
「うわー。普通に引くね。確かに僕の愛しい人
は最高に可愛いけど……そこまでいくとさ……」
「悪魔に言われたくないんですが」
ノアと悪魔が戦いながらそんな会話をしている。
そうですよ?ヴィンセット家の男性達は
どんな魔力に邪魔されても『ディア探知機』
が壊れる事はないのですよ……。
悪魔が振り下ろす剣は赤く光り常に炎が出
ている。それに対してノアの剣からは金色の
光が出ていてその炎を浄化している。
どちらも譲らず剣が火花を散らす。
私の魂?がふわふわと浮いているから割と
遠くまで見渡せる。しかもこの場所は少し
小高い山になっているのだ。
ふと街であろうと思われる場所を見たら
数カ所から煙と炎が出ている。
そして爆発音も。何?何が起こってるの!?
その爆発音にノアや私キルア様やルイお兄様
もハッとした。
「あ〜。あれ?あれはねぇ、折角エルフ王国に
来たんだから挨拶がてらに魔獣達を数匹放った
んだよね。今まで平和だったようだから王都
も大変そうだね〜」
悪魔がニヤニヤしながら説明した。
コイツ、どこまでも悪魔だな!
やる事が酷い!
「……大丈夫だ。王都にはアダン殿下達も
居るしエルフの王族達は強いですからね」
ルイお兄様がニッコリと微笑んだ。
うっ!!!その笑顔は何回見ても反則
でしょう!
「ルイ!行くぞ!もっと魔力を入れろ!」
「え……と、キルア?でいいのかな?
その木の棒ではなく私の剣を使ったらどう?」
「馬鹿か?ディア姫の腕力ではルイの剣なん
か振り回せるわけねーだろう?あ、魔力で
軽くするってのは止めてくれよ?その分
ルイの威力が無くなるからな。因みに俺の
魔力も現役時代の三分の一になってるから
無理だ」
え!?キルア様の魔力が三分の一になっ
ててこの威力なの!?凄すぎるんです
けど。でもそんな現役時代のキルア様
を殺した悪魔も魔力は化け物並みだよ
ね……。
「相変わらず冷静に分析しているね。分か
った。じゃあもっと魔力を入れるよ?」
ルイお兄様の手から魔力が光になって私キルア
様が持っている棒に注がれる。
その間も悪魔分身の2人から炎の矢や巨大ムカデ
の攻撃をされているのに余裕でそんな会話を
してる。凄いな。長年連れ添った夫婦みたいに
2人の戦い方は息が合ってる。
私はふわふわしながら魅入ってしまう。
この2人は本当に凄いんだと自覚する。
あんなに戦えるのって羨ましいなぁ。
いくら私の中で何かを育てるのに魔力の
殆どを吸い取られているとしても少し
ぐらい魔力が使えてもいいじゃんね?
そもそも本当に何を育ててるんだ?
あの時無理矢理でもアクアから聞い
ておけばよかったよ……。とほほ……。