エルフ王国の街③
その後、街を見て回ったのだけれど
聖女様はアダン殿下とサイラス様に
両側をガッツリとガードされて歩いて
いる。
「もー!暑苦しいよ?こんな街中で
ディアに何もしないよ」
聖女様がブツクサ言ってる。
「いや、分からんぞ?お前ならディア
を建物の陰に連れ込んで消えそうだ」
アダン殿下がギロリと聖女様を睨む。
街は活気に溢れていて市場の野菜や果物は
新鮮で美味しそう。カフェやレストランも
多くのお客さんで賑わっている。
いい国だな〜。
アグネスもいい国だけどね!
1000年前は腐ってたみたいだけど。
「そろそろ昼食にしましょう。予約して
あるのでこちらへどうぞ」
次男王子様がレストランへと案内してくれた。
「こちらではエルフ王国の家庭の味が楽しめ
ます」
えー!それは楽しみ!エルフの皆さんは
家ではどんな料理を食べてるのか興味ある!
そんなに大きくないお店だ。だけど清潔で
木のテーブルや椅子は落ち着きがある。
次男王子様が料理も予約してくれていたようで
私達はそれが出てくるまで待つことになった。
「ちょっと……。失礼します」
私はおトイレに行きたくなって席を立つ。
「私も行こう」
「姉様、僕も」
いや。そこまでは……。
私は大丈夫だからと2人を説得してトイレに
行く。結構奥の方だな。
あー。ここか。少し重い木の扉を開ける。
うん。中は広い……。
そう思った瞬間、後ろから突き飛ばされて
中に転がる様に入った。
いや、転がった。そんなに切羽詰まった
人がいたのか?
「先に入りたかったのなら言って下されば
お譲りしましたのに……」
と言って見上げた先には黒いローブを着て
いる美少年が立っていた。
黒い髪の毛に……銀色の瞳。銀色……?
悪魔だ。悪魔だよね!?
私は大声を出そうとして息を吸った。
すると悪魔がしゃがんで私の前髪を鷲掴みに
した。
「声出しても聞こえないよ?シールド張った
もん。今世の僕の愛しい人はかなり抜けてる
んだね。魔力も使えないみたいだし、警戒心
も全然ないし」
この悪魔の顔。見たことあるぞ?
アイツだ……。キルア様を手にかけた
アイツだ!
「何故、悪魔がエルフ王国に……?」
「あ〜それね。僕は悪魔とエルフのハーフでね。
エルフの血が混ざってると僕の愛しい人がエルフ
王国にかけた守りの魔力が勘違いして僕をエルフ
だと認識するみたいだよ?だから簡単に入って
来れたんだ。それに魔力の力も弱くなってき
てるしね」
そうなんだ。ポレットも完璧な術はかけれて
なかったって事か。うん。少し人間味も感じ
るエピソードだね。何だか納得。いや、納得して
る場合じゃないんだよね。トイレもさ、したかっ
たけどこの状況で全部引っ込んじゃったよ。
「テメー……。膀胱炎になったら責任取れよ?」
私は目の間に居るキルア様の仇にブチギレた。
「は?何?ぼう……?意味分かんない。
今世の僕の愛しい人は少し面白いね……」
美少年は妖艶な微笑みを浮かべた。