エルフ王国の街
パーティーは夕方からなので私達は
朝食を終えてから少しエルフ王国の
街を見に行く事になった。
王城から馬車に乗る。
ここでも揉めるわけですね。
「まぁ、メルカルロはディアの従僕だから
一緒の馬車で良い。後は私とノアで」
ルイお兄様がサラリと言った。それに待った
をかけたのが聖女様だ。
「何当然みたいに言ってるんだ?お前と
ノアは騎士だろう?アーサーの騎士なん
だろう?アーサーと乗れよ。サイラスもさ。
僕とディアと従僕とナルマルロでこっちに
乗るから」
馬車はちなみに4人乗りだ。そして聖女様?
次男王子様を呼び捨てってさ……。
「何故、お前の言う事を聞かねばならない
のだ?」
ルイお兄様がキレる。
「ルイ?移動の時間なんて少しだ。街に行ったら
ずっと横にいればいい。馬車ぐらいディアを
自由にさせてあげなさい」
ルイお兄様に唯一意見出来るアダン殿下が
2人の間に割って入った。
「しかし……」
「ルイお兄様?街では腕を組んでも?」
私もこの場を穏便に済ます為に言った。
「まぁ、それなら……。分かりました」
良かった……。流血沙汰にならなくて……。
「姉様!兄上の反対側の腕は僕と組んで
下さいね!」
ノアが小さな声で言ってきた。
良いんだけど、嬉しいんだけどアダン殿下は
誰が護衛するんだい?
「ナルマルロ殿申し訳なかった。出発して
もらえるだろうか?」
アダン殿下が次男王子様に頭を下げている。
部下の揉め事をきちんと謝れる人。
素晴らしい。
上に立つお人って感じ。
次男王子様は面白いなって感じでニコニコ
しながら見ていたので大丈夫だと思うよ。
で、馬車に乗ったんだけど。
何故か私は聖女様の膝の上だ。
「えーと?女神様は馬車移動の時はこの様な
感じなのですか?」
次男王子様が困惑している。そりゃそうだ。
私も困惑だ。
「あ、いいえ、決してそのような……」
「これで正解です。いつも誰かの膝の上です」
聖女様が私の答える声より早く言った。
いや、いや、いや。誰かって誰でも良いわけ
ではなくてヴィンセット家の人達限定ですよ?
魔力をもらってるので。内緒だけどもさ。
次男王子様が『本当にそう?』とメルカルロ
に目で訊いている。
「いいえ。正解ではないです。お嬢様を
膝の上に乗せても良いのはヴィンセット家
の方々だけです。聖女様、お嬢様を隣へ」
メルカルロからもの凄い圧がくるよ。怒ってる。
いつもの怒り方と違うな。
私まで怖くなちゃう……。
そんなメルカルロをガン無視して聖女様は
やりたい放題になってきた。
「ディアの体は柔らかいねぇ。髪の毛も
良い香りがする。首筋から色気が……」
「うひゃ!」
変な声出た。聖女様が私の腰に腕を回しながら
頭や首の匂いを嗅ぎ始めたからだ。
やっぱりヴィンセット家の人達以外にやられると
駄目だ。気持ち悪りーーー。
私はポレットみたいに魔力が無いので腕や頭を
切り落としたり出来ない。それを知ってるのに!
でも殴る事は出来るよね?このヤロー!
私の首筋に鼻をつけている聖女様の顔を
殴ろうと腕を上げたけど聖女様の聖力で阻止
された。ぐぬぬ〜!!!
すると次男王子様がニコニコ微笑みながら
スパっと聖女様の首を切り落とした。
「……」
私無言。
勿論聖女様の首から噴き出した血が私に直撃
だ。そんなに広くない馬車の中なので次男王子様
とメルカルロにも返り血が降り注ぐ。