side エルフ前国王 シューピオ⑤
私は皆について討伐に行っていた時、
悪魔が何処にいてどの方向から攻撃してくるの
かは教えているがエルフの魔力は殆ど使って
はいない。
皆を心から信頼してはいる。だがやはり
一国の王としてエルフの魔力を他国に見せる
事は出来ないと思っている。それなのに彼ら
の戦い方はしっかりと会得して帰ろうとして
いるのだ。多分その事はポレットも皆も分かっ
ているに違いない。
それでも彼らは何も言わない。
そんな彼らが大好きになり私は中々国に帰れず
にいた。側近達にはそろそろ……と口煩く
言われるようになってきた。
そんな時だ。
「シュー、そろそろ国に帰らなくてもいいのか?
前に言ってた国を任せてきた弟さんも大変に
なってきてるんじゃないのか?」
アーサーがそう言ってきた。
私が留学して丸2年が経っていた。確かに弟には
そろそろ負担がかかってきている頃だろう。
「もしかして側近達から聞いたの?」
側近達は姿が見えない。この話題になった途端に
姿を消した。
「あ……まあ……な。でもさ、国王不在で
何かあったら大変だろう?」
「う……ん。そうだけど……」
「ほら、永遠の別れってわけでもないんだし。
な?向こうから王を返してくれなんて言われたら
こっちの頭の悪いトップ達がどんな難癖つけて
くるか分からないだろう?」
アーサーは基本優しい。自国の事でもないのに
色々心配してくれる。
「……そうだね。一回帰るよ」
私は後ろ髪を引かれる思いで彼らに別れを告げ
エルフの国に帰ったのだ。
「兄上〜〜〜!!!もう帰って来ないのかと
不安で、不安でーーーーー!」
そう言って迎えてくれた弟の目にはクマが出来て
いて3年前より痩せて一回り小さくなっていた。
すまない……。
暫くの間は政事に没頭した日々を過ごしていた。
悪魔達が頻繁に現れ国で暴れる様になったのだ。
騎士達にポレット達がしていた様な戦い方を
教えるが上手くいかない。
そうか。あの戦い方はあの4人でないと成立
しないのだ。誰も真似など出来ないのだ。
それを4人は知っていたから私に何も言わず
戦い方を見せていたのだろう。
ふふふ。流石彼らだ。私の親友達だな。
そんなある日だ。それは突然だった。
「シューピオ様!アグオス帝国のポレット様が
謁見を申し込んできました!」
なんと!きっともう会えないであろうと思って
いた初恋の相手から!これは運命かもしれないな!
「いいえ、そのような甘い雰囲気は一切ございません
でしたよ?勘違いしてあまり気持ちの悪い事を
言われませんように……」
……?口に出して言っていたのか。
嬉しさのあまり……私とした事が……。
しかし相変わらず側近達はハッキリものを言う。
長い付き合いだ。許そう。
それから数日の間ポレットが指定してきた日にち
を心待ちにしている私は全てが上の空だった。