side エルフ前国王 シューピオ③
私は呆れて勇者達を見た。するとポレットと
目が合った。
「名前は?」
ポレットが私に叫ぶ。
「シューです」
留学するにあたり勿論偽名だ。
「シュー!どちらの方角から気配がする?」
え!?信じたのか?
「おいおい、ポレット?イベントだぞ?そんな
本気モードになるなよ。怖えーよ」
サイラスが戯けて言う。
イラつきが頂点に達しそうだ。
「相変わらずお前は馬鹿だな。あの子の力は
本物だ。さあ、早く教えてくれ!手遅れに
なる前に!」
そうサイラスに叫びながらポレットが私
の側まで走って来た。
ポレットは私を信じた……。
しかし走る姿まで綺麗だ。絵師に描かせたい。
「本当なんだな?ポレット?」
アーサーも走って来てそうポレットに確認する
と私の肩を掴み訊いてきた。
「ゆっくりでいい。正確な方向は分かるか?」
私は訊いてきたアーサーではなくポレットに
向かって答えた。もう私の瞳にはポレットしか
写っていなかったのだ。
「東の空から魔力の強いのが1体とあまり
魔力は強くない3体は西の土の中から出て
くる……と思います……」
「分かった!聖女!子供達と教師達の安全の
為、この会場に防御魔力を!我々は悪魔と
戦う!」
そう叫んだポレットの美しいこと……。
私は見惚れてしまってその場から動けない。
「お前、すげーな!ポレットが信じるって事は
本物だ。怖いか?そうだよな。悪魔だからな。でも
大丈夫だ。俺達が退治してきてやるから」
私が動かないのを見て勘違いしたサイラスが
ポンポンと頭を軽く叩く。
不敬だな……。
「僕も戦いに参加したいんだけど!」
既に走り出していたポレットとアーサーに聖女が
叫んでいる。
「お前はしっかりこの会場に居る人達を守れ!
愛しのポレット命令だ!」
サイラスがそう言いながら走って行く。
愛しのポレットだと!?私はムッとして聖女を
見た。目が合い聖女がため息をつきながら言う。
「何?ほら早く君もこっちに来て?皆んなで
集まってもらえると守りやすくなるから……」
聖女が言い終わらないうちに私は転移魔力を使い
ポレット達が居る外へと移動した。
そこには西の方角の足元を見ているサイラスと
東の空を見上げているポレットとアーサーが立っ
ていた。
それを後ろから見ていた私の横に音もなく側近
の3人が現れた。
「来るのですね。悪魔達が」
「ああ。1体は面倒くさそうな奴だ」
「では勇者達の力を見るのに丁度よいと……」
「ふふふ……。よく分かっているな」
「勿論でございます。貴方様の事で
分からない事などありませんよ」
3人それぞれ私に話しかけてくる。
……来た。
「ポレット!3メートル右上から来る!
サイラス!もう足の下に来ているぞ!」
私が叫ぶと一瞬こっちを3人は見たが素早く
向き直り戦いが始まった。
あ……子供っぽい話し方するのを忘れて
いたな。