side エルフ前国王 シューピオ
私がエルフ王国の王位を譲り受けてから
数年が経った。隣国のアグオス帝国は
私の父親が国王だった時代に攻め込んで
来た事があり我が国はいつも警戒している。
攻めて来た理由も訳がわからない難癖を
つけてこちらの返答も待たずに軍を進めて
来たのだ。なんと野蛮な国だろうか。
それに加えて魔王率いる悪魔族達も最近は
行動が活発で頭を抱えている状態だ。
まあ、悪魔に関してはアグオス帝国も大変
な様だが。
「国王様、最近アグオス帝国に悪魔達と対等
かそれ以上に強い者たちが現れ次々と討伐
しているそうです」
我々が悪魔をどのように対処しようかと話し合っ
ていた時にそのような情報が入ってきた。
「ほう……。それは面白いな。本当なのか?
ここ何百年もそのような者達が現れた事がない
のだがな……」
私は直ぐには信じられずに側近に再度尋ねた。
「はい。アグオス帝国に居る『影』からの報告に
よるとかなりの強者だとか。中心となって動いて
いるのは『金色の女神』と言われている女性だとか」
女神……。
「それと今の魔王がその女神に大層ご執心だとか」
「……珍しいな。悪魔族が1つの個体にこだわりを
見せるとは」
今の魔王は歴代の魔王の中でも一、二を争うほど
冷酷だと聞く。人間など直ぐに殺してしまうの
に。その魔王が執着しているとは。
凄く興味が出てきた。
「アグオス帝国に留学という事にして潜入する。
そのように計らえ」
「国王自らですか!?」
「大丈夫だ。アイツらと会議をした時は大人の
姿になっているだろう?本当のこの姿では誰とも
会った事がない。ゆえに王族の1人として留学
する」
そう。私は体の成長が普通のエルフよりも遅い。
今21歳なのだが見た目は10歳ぐらいだ。私の
様な者は王族にたまに生まれてくるようだ。
ここに居るぶんには別に不自由はないのだが
流石に隣国との顔合わせでは子供が来たと言って
なめられては困る。だから魔力で大人の姿に
なって会議に参加しているのだ。
私が魔力で姿を変えていても誰も気が付かない
アグオス帝国のトップ達。あの様な無能達が
トップではそのうち国は滅ぶ。
まあ、私には関係ない事だが。
そうして私は王族の子息が留学してきた様にし
数名の側近と共にアグオス帝国に入り込んだ。
上手く少年少女校に入り色々探りを入れる。
確かにこの国には『勇者』と言われている
若者達がいる様だ。
子供達は憧れている様で勇者の話になると
止まらない。
その勇者の中でもダントツで人気は『金色の女神』
のポレットという女性だった。