昔の話③
そして気がつくとアダン殿下もサイラス様も
近くに座っていた。
「皆さん、なぜここに集まっているのですか?
この様に広い席なのに……」
お料理を持って帰って来たノアとメルカルロ様
が困惑している。だよね。ダンスパーティーで
も出来そうなくらい広い部屋の真ん中に設置
されている長いテーブルと椅子なのに私が座っ
ている端っこに皆んな集まっているんだもん。
「ああ、聖女様が昔の話をしてくれていてね。
私達もお祖父様から聞いたことが無い話な
ものでつい聞きたくて引き寄せられてしまっ
て」
長男王子様が照れた様に説明している。
なぬ!?いつの間にか長男王子様と
次男王子様も隣に座ってるし!
「ええー!この話は記憶のないディアにして
るのに」
聖女様がプンスカ怒る。
「聖女様の話が上手なんだよね!続きを
聞かせ欲しいな〜」
聖女様の機嫌が悪くなると面倒いので上手く
機嫌取りをする。
「ん……。その話し方、可愛い過ぎ
でしょう!でもここからは本人が居るし?」
聖女様は前国王様をチラリと見た。
「わ、わ、私なんかお話なんて……」
前国王様の顔が真っ赤だ。
ふふふ。可愛い。でも私よりも1000歳は確実
に年上だけどな。
「教えて下さい。その後はどうなったのか。
気になります!」
私が前国王様の顔をじっと見て催促する。
「え?あ、あっと、それでは……
少しだけ……」
そう言って前国王様が語り始めようとした。
しかしそこで待ったがかかった!
「ああ、でも折角の料理です。本日の為に
料理人達が腕を振るいました。召し上がり
ながら聞いて頂きたい」
次男王子様がニッコリ微笑みながら言うと
ノアとメルカルロ様が持っていたお皿を
私の前に静かに置いた。
むほぉぉぉぉーーーーー!美味しそう!
そうだよ〜。お腹空いてたんだよ。私はさ。
食べながら聞いてもいいよね?
「私の前だけにしかお料理が無いですよ?
皆さんと一緒に食べながら聞きたいです」
私がそう言うとそれもそうだとそれぞれが
食べたい料理を持って集まって来た。
聖女様、サラダだけぇぇ〜!?あんなに沢山
美味しそうな料理が並んでるのに!
サイラス様、お肉だけぇぇ〜!?野菜も
美味しそうに味付けされてるよ?
アダン殿下、パーフェクトです。お肉にお魚
野菜。何も言うことはございません。
私のお皿。揚げ物メインのパスタやグラタン
サラダに果物。こんなに食べれるのか?
ノアとメルカルロ様をチラリと見た。
「大丈夫です。いつものお嬢様の食欲なら」
「そうですよ。この後はデザートも、
ですよね?」
メルカルロ様、暴露しないで。
ノア、それは大正解だ。
皆が席に座って落ち着いたところで
前国王様が静かに語り始めた。