昔の話
「返事が欲しいって何の事だろうね?」
少しぼーとしていた私に聖女様が話しかけてきた。
「うん。何だろうね?記憶が無いってこーゆー
時に困るよ〜」
「ふふふ。記憶が無いから返事もしようが
ないよね?良かった。アイツああ見えて結構
積極的だから」
聖女様が青スジ立てて静かに言う。
怖いから。その青スジ。
「そうなの?前国王様ってどんな人?どうやって
知り合ったの?」
「……少し昔の話をしようか?」
そう言って聖女様は私の頭をポンポンした。
それを私の後ろで警護していたルイお兄様が
見て手を動かそうとした気配を感じたので
振り向き笑顔を作る。
大丈夫だからときちんと伝わった様で元の
姿勢に戻ってくれた。そして私と一緒に
聖女様の話を聞いているみたいだ。うん。
気になるよね。元国王様の昔。ポレットを
含めた4人の勇者達の話。聖女様は
転生者だけど生き証人みたいなものだし。
「ポレットが15歳、僕が14歳、アーサーが
18歳、サイラスが19歳の時に元国王の
シューピオがアグオス帝国に留学してきた。
多分彼は20歳は超えていたと思うけど
見た目が10歳ぐらいだったからアグオス
少年少女校に入ったんだ」
今はそんな名前の学校は無いよな〜。
流石1000年前だ。レトロな名前だな。
前世的には小学校的な?
中身が20歳超えて成人してるのに?
「成人してるのにって思った?わざとだよ。
シューピオはこの国がどの様な勉強を
幼い子供達にさせているのか見に来たんだ。
どの国でも幼い頃に習った事や環境で人は
変わるからね」
「それは偵察って事かな?」
「そう。エルフの国にアグオス帝国がどれだけ
脅威になるかを確認しに来たってとこかな。
当時のアグオス帝国のトップは王族ではなく
貴族のお偉いさん達だったからあんまり頭が
良くなくてね。シューピオが幼い子供だと騙さ
れてたんだ。笑えるよね。そんな奴らがトップ
なんてさ。だからかな、突然に変な理由で
攻めてきたら困るってエルフの国は思ったの
かもしれない」
うん、うん。変な人って突然自分の考えだけで
行動するからね。警戒されてたんだ。
「王族は居なかったの?」
「そう。王族を作ったのはアーサーだからね。
もう少し先の話だけど」
1000年前ってホント今と違うんだなぁ。
驚きだよ。
「ねぇ、変な質問していい?」
「何?」
「1000年前って人間はきちんと人間の形してたの?
例えば見た目が今と全然違うとか……」
「ちょっと!1000年前の人間を化け物扱いしない
でくれるかな!?今とそんなに変わらないよ!
もー!」
「ごめん。1000年前って全然想像つかなくて……」
だって1000年前の国や文化とか人間もとても浪漫
じゃない?絶対に行けないし会えないんだもん。
「話戻そう……か……」
私がへら〜と笑うと聖女様も「もう!」とプンプン
してたけど「可愛いな……」と呟いて話の続きを
始めてくれた。