登城③
「ああ、それとルイお兄様とノアは変態じゃ
ねーよ?むしろお前の方が変態じゃん。人の
胸を平気で揉む、好きあらば唇を狙ってくる
一度アーサーとサイラスに薬盛って私を
襲いに来たよなぁ?その時は細切れに刻んで
やったけどルイお兄様もノアもそんな事
絶対にしねーんだよ。2人の愛は家族愛なん
だ。この溺愛はな、家族として愛してくれて
んだよ!もう2度と変態なんて言うなよ?」
「1000年前にそんなハレンチな事を……
やはり許せないよね……」
ルイお兄様がホラーな微笑みで呟いていた
事を私は知らない。
「お前さ、前に会った時に私に威嚇術をかけた
だろう?そのせいでずっとお前が怖かったわ。
その術かけて私が怖い、怖いって寄って来なかっ
たら女神様の資格なしで今回のエルフ王国に行く
のを拒否して私達に協力しないつもりだったよ
なぁ?全部お見通しなんだよ!ボケがぁぁ!
確かに怖かったわ、さっきまでな。お前って
そーゆー奴だって思い出した。お前の術を
回避できねー奴は認めない主義な。面倒くせー
んだよ。いちいちよぉ!」
少し聖女様の表情が柔らかくなってきた。
「言っとくけどお前、拗らせすぎだわ。馬鹿
じゃねーの?お前が陰で自分の聖力磨いてるの
アーサーもサイラスも知ってんだよ。凄く努力
してるの知ってんの。だから認めて少々の
我儘は許してやってんのに拗らせすぎて優しさ
にも気づかない最低野郎になってるぞ?
まぁ、今回お前が協力してくれなくてもな、
3人で行って箱ぐらいぶっ壊してこれるんだよ。
来たくなければ来んなよ。邪魔だ!!!」
めちゃくちゃ叫んだからちょいと疲れた。
ふぅーーーーーーと一息ついたら聖女様が
口元を掴んでいる私の手を掴み自分もテーブル
に上がって抱きしめてきた。
「何ぃぃぃーーーー!記憶無いなんて言っといて
異世界人の魂と綺麗に混ざり合って脳の奥に
ポレットの記憶あるでしょう!
ポレットだ!僕が愛しているポレットだぁぁぁ!
1000年前もそう言って、そんな口ぶりで怒って
くれたよね?もう大好きぃぃーーー!絶対に
離れないからぁ〜!!」
聖女様は泣きながらそう叫んだ。
えーと、これは私を女神様だと認めてくれた
って事であってる?
「あはははは!」
部屋の中に豪快な笑い声が響いた。
皇帝陛下だ。
「元レディースの頭とは何か後から教えてくれ。
ディア、お前は最高だ。アダンでも手を焼いて
いた聖女を手懐けるとは、凄いな!」
拍手しながら楽しそうに笑う。
「ディア?ポレットの記憶が?」
アダン殿下がいまだに聖女様に抱きつかれている
私を下から見て尋ねてきた。
「いいえ。記憶はやはり無いですけどなんか
口からつらつらと出てきちゃって……」
「そうか、でも過去のことは全部あってるし
太陽神のやった事も知っていたね?もう
ポレットの記憶もディアの一部になっている
のかもしれないな」
アダン殿下が少し嬉しそうに笑った。
そしてその部屋にはまだ泣き止まない聖女様の
鳴き声が響いていた。