登城②
「だってそうでしょう?君は太陽神から女神様
を守れと命令されてこの世に生まれてきてる
んだからさ。命をかけて守らなければいけない
対象のクラウディアを恋愛の『好き』って
勘違いしてるかもしれないって事さ」
「先程から太陽神の息子と言っていますが
どういう意味ですか?」
ノアが冷静に、だけど殺気だった声で尋ねた。
「え!?知らなかったの?笑えるぅ〜。
太陽神もさ、きちんと記憶残してあげれば
よかったのに。これじゃあ可哀想だよ」
聖女様がふふふと笑う。
「おい。太陽神ってアグリアの事か?」
サイラスが口を挟んできた。
「そうだよ。ポレットの大親友アグリアの
事。そうか!この坊やにアグリアの血が
混ざってるのが分かるのって僕だけなんだ?
僕の聖力って生まれ変わっても鈍ってない
って事だね。安心したぁ〜」
ちょっとイライラしてきた。
もう怖いとかないんですけど?
なんなの?この人を馬鹿にしたような態度。
「きっとポレットがアグリアに頼んだか何か
契約したかで生まれ変わった自分の安全を確保
する為に側に生まれてくるようにしたんだね。
多分自分の魔力は底をついたか殆ど使えなくなる
のを見越してアグリアに託したんだ。でも?見目
は変態兄貴とそっくりって事はレオン・ヴィン
セットの婚外子ってわけではなさそうだし」
ブチーーーーーーーーーーー!!!
私はキレた。
完全にキレた。
元レディースの頭の私が顔を出した。
「ざけんなよ?」
私は笑いながら、でも目は笑っていない顔で
聖女様に言った。
「え?」
聖女様がパチクリと大きな目を更に大きく
してこっちを見ている。
私は目の前のテーブルに勢いよく上がり
聖女様の前に跪く。そして彼の口元を
親指と人差し指でムニっと挟み言った。
「あ?どの口が言った?この口かぁ?悪い
けど元レディースの頭舐めんなよ?ノアが
レオンお父様の婚外子かもって?お前な〜
ヴィンセット夫婦がどれだけラブラブなのか
知らねーだろうよ?どれだけレオンお父様が
ローズお母様に惚れ抜いてるのか知らねーだ
ろう?あぁぁぁ?どうなんだぁぁぁ?」
私のこの言葉にレオンお父様が小さく
「ディア……止めてくれ……」
と両手で顔を覆って呟いていたなんて
知らなかったよ。ごめん。
「ローズお母様がノアを身籠った時にアグリア
が自分の術をかけた血を一滴果実水に混ぜて
飲んでもらったんだよ!分かったか?
ゴラァァァァ!!!」
聖女様は私に口元を掴まれたまま微動だに
せず聞いている。
「それになんだ?ノアが好きを勘違い?
ああー!良いんじゃね?勘違い上等だよ!
それでノアの気持ちが上がってアグリアか
らの使命を全う出来るなら何が悪い?きっ
とアグリアの事だ、使命が果たされなけれ
ば何か怖い罰があるに決まってる。私の親友
だからな。まぁ何かペナルティがあっても
私はノアを守るがな」
私のその言葉を聞いたノアが小さな声で
「姉様……嬉しい……勘違いではなく
愛しています……」
と呟いていた事を知らない。