パーティーにて⑤
「え!?なんで!?僕のシールドは特別に
複雑な呪文を組み込んでるのに!解除
出来る奴なんて……」
狼狽える息子。
その瞬間に私はノアとルイお兄様に抱きかかえ
られて息子はアダン殿下とサイラスに取り押さ
えられていた。
「姉様。遅くなって申し訳ありません。怖かった
でしょう?」
ノアがギュッと私を抱きしめた。
そして息子に向かって言った。
「かなり凝ったシールドを作ったみたい
だけど僕からしたら全然難しくなく解除
出来ちゃうよ?アダン殿下からお前が
聖女様の生まれ変わりだと聞いたけど
許さないから……。姉様にこんな事をして
絶対に許さないから」
ノアがこんなに怒ったのって初めて見たかも。
「お前……。成程ね。今世は色々面倒くさくて
邪魔な奴らが沢山いるんだ〜。前はさ、お前と
お前しか居なかったから楽だったんだけどねぇ」
息子はそう言いながら自分を取り押さえている
アダン殿下とサイラスを見た。
よく見るとアダン殿下とサイラスは魔力で
息子の聖力を押さえ込んでいる。
流石、聖女様を知ってるだけあって制御出来る
んだ。凄い。
「とりあえず、王城で詳しく話を聞かせて
もらおうか?」
アダン殿下はサイラスとお付きの人達と共に
レオンお父様に頭を下げて息子を引っ張り
去っていった。
それに続き皇帝陛下やユーリ様もレオンお父様
に何かを言って会場を後にする。
髪の毛もドレスもボロボロになって呆然として
いる私にエドがそっと自分が着ていたジャケット
をかけてくれる。
ローズお母様やメルカルロ様、エルフ王達も
側に来てくれた。
ノアとルイお兄様が交互に私に話しかける。
「ディア、どこか痛いところはないかい?
ああ、こんなところに爪痕が……。ああ、
こんなところに擦り傷が!アイツは駄目だ。
聖女だって!?私は絶対に認めないよ?」
「姉様、お部屋へ。今は少し休みましょう?
ね?」
聖女様探しも組み込まれていたこの
成人の祝いパーティーだったからなんとなく
こんな事も起きてしまうかも?
って自分の中で思ってた部分もあり……。
だってアダン殿下もサイラスも聖女様は
異常だって言ってたからね。
息子にされた事はかなりセクハラだった
けどさ。だけど私はその事より。
スイーツ食べたかった。
お酒飲みたかった。
アルコールデビューしようとワクワクして
たのに。クレープ5枚ぐらい食べようと思っ
てたのに。
エドがそっと私の耳元で
「落ち着きましらスイーツとお酒をお持ち
します。今はノア様の言う通りに少し
お休みください」
と優しく囁いた。
なんて、できた従僕なんだろう。
最高だ。
てか、いつもエドは私が考えていることが
分かるんだけど、なんで?
謎だな。
ルイお兄様にお姫様抱っこをされて会場を
出る時にチラッと見たけど……。
嵐が来たの?ってぐらいぐちゃぐちゃになって
たよ……。
多分『ディア溺愛集団』の方々が怒りのあまり
やってしまった結果だろうね。
レオンお父様が来賓の方々に謝っている姿も
見えた。ごめんなさい。色々用意して素敵な
パーティーだったのに。
とほほ……。
と、思いながらちょっと疲れちゃったなって
ルイお兄様の胸の中で目を閉じた。