アーサー王の生まれ変わり
テーブルには美味しそうなお菓子と紅茶が
セッテイングされている。
並んでいるお菓子は私が前世で好きだった
やつをこちらの世界で広めて超人気が出た
物ばかりだ。
「まさかこのお菓子全部異世界の物だった
とは思わなかったな」
アダン殿下は楽しそうに笑った。
「ディアは異世界に居た時はお菓子が好き
だったのか?自分で作れると聞いたが
異世界ではシェフか何かだったのか?そもそも
働いていたのか?」
「殿下、その様に一度に幾つも質問されては
ディアも困ります」
アダン殿下の側近として同じく側近のミエル様
と一緒に後ろに控えているルイお兄様が
少し不機嫌に言った。
今回のお茶会は予想通りのメンバーだった。
けど、イザーク殿下はお出掛けだったようで
不参加だ。ノアも行きたいと言っていたけど
もう少しで聖騎士の試験があるようでその
勉強の為不参加。
「ああ、すまない。異世界の事を聞きたくて
気が急いた」
「いいえ、大丈夫ですわ。そうなのです。
異世界人の時はお菓子が好きすぎて作り方を
教わりに行っていたのです。そして働いては
いましたがシェフではありませんでしたわ」
私はニッコリと答えた。
「そうであったか。この国とは全然違うの
だろうな。異世界とは」
「はい。まず魔力、魔法がございません」
「え!?ではどうやって生活しているのだ?
火を起こしたり水を出したりと出来ないで
あろう?」
「そこは文明が進んでいまして大丈夫なので
すわ」
はい。どんどん説明が面倒になってきた。
「異世界の事はまた今度で。それより聖女様
の事なのですけれど……」
私は話題を変えた。
「ディア?異世界人の話し方を何故しない?
ミエルにも異世界人の事は話してある。
ここに居る者たちは全て知っているのだから
あの話し方でもいいのだよ?」
アダン殿下が残念そうに私を見たが
え?それは色々皆様が大変そうだからですよ。
「あ、でもあの話し方をすると内容全然聞いて
ないですわよね?ですので今日は封印ですわ」
その場にいたミエル様以外の方々は無言で納得
している。残念そうにしているミエル様にはまた
今度お披露目しますのでごめんなさいって事で。
「聖女様は生まれ変わっているのでしょうか?」
「聖女の事だから絶対に私達と同じ時期に
合わせて生まれ変わって来るはずだ」
アダン殿下が自信ありげに言った。
「あのう、アダン殿下がアーサー王の生まれ変わ
りだと皇帝陛下やご家族の方が知った時はどの様
なご反応を?」
これ!前から訊いてみたかったんだ。
「ああ、それは……。2年前にアーサーの記憶が
戻った頃から父上は何かおかしいと気が付いて
いたようだ。そして私が悪魔に効く魔力攻撃
方法を騎士達に教え出して確信したようだ。
これはアーサー王だな、とね」
あ!悪魔攻撃ってルイお兄様も習っていた
魔法陣やら呪文やらのアレですな?
「でも私が自分で言い出すまでは何も言わずに
いてくれていた。で、突然のサイラスだ。
まあ、私もずっと黙っているつもりはなかった
ので良い機会にはなったのだが突然すぎて
少々戸惑った」
アダン殿下が紅茶を飲みながら渋い顔を
してサイラスを見る。
「あの時は悪かったよ。だってやっとポレット
と再会できたと思ったら次にアーサーだろう?
俺も舞い上がちゃってさ」
サイラスはクレープを食べながら笑う。
因みに中身はブルーベリーと生クリームだ。
「それで父上はやはりそうだったかと。
アーサー王の予言書を穴が開くまで読み込んだ
父上だったから嬉しかったのだろう。自分の
息子が生まれ変わりで誇りに思うと言って
くれた。勿論母上もイザークもね。例の
魔力攻撃方法は予言書に載っていたから
直ぐに分かったと父上は言っていたよ」
皇帝陛下はアーサー王大好きっ子だった
んだねぇ〜。良かった、良かった。