side アダン殿下
私はアーサー王の生まれ変わりだ。
2年前に突然1000年前の記憶が戻った。
きっかけは分からない。
その後その事は誰にも話さなかったの
だが1000年前に一緒に悪魔討伐をしてい
た仲間のサイラスと再会した事で公に
なってしまったのだ。
何もずっと隠そうとは思ってはいなかっ
たのだがアイツのせいでグダグダな
公表となってしまった。
しかもサイラスは不老不死になっていて
1000年前のままだった。
不老不死になった理由は1000年前に突然
行方不明になった『金色の女神』といわれ
我々と共に悪魔討伐をしていたポレット
を待つためだという。ポレットがいつ帰って
来ても良いように、いつポレットが生まれ変
わっても良いようにと。
もし自分が生まれ変わっている間にポレット
が帰って来たり30年、40年以上生まれ変わり
時期が違ってしまっていたら嫌だからだと言う。
それを聞いて私は愕然とした。
そうか。その手があったのだと。
私は結局伴侶を持たずに老いてからは
弟の息子に王位を譲った。
そしてポレットを想いながら長い眠りに
ついたのだ。自分が生まれ変わるなどと
思ってもいなかったのだ。
そしてクラウディア・ヴィンセット。
彼女は『金色の女神』と言われたポレット
の生まれ変わりだ。
生まれ変わったということは1000年前に
死んでいた事になる。
あの時、行方不明になった彼女を必死に
なって探した。
死んでいたのなら見つからないわけだ。
あの時の悪魔討伐メンバーはポレット以外
は男だった。3人の男どもは皆ポレット
に惚れていた。
男まさりで不器用だけど誰よりも強く
気高いポレットに惚れない男などいない
だろう。
ディアの事は私の側近で彼女の義兄
でもあるルイからしつこいぐらい聞いてい
た。正確には従兄妹なのだが。
溺愛しているのだなと最初は気にも
とめていなかった。しかし私の記憶が
戻った頃からディアも変わったのだ。
ルイがディアに関して話す内容がガラリと
変化した。以前は儚げな少女のイメージ
で聞いていたのだが突然に活発的な少女
になった。人間がその様に突然変わるの
だろうか?と疑問に思っていたらルイも
疑問に思っていたらしい。
『それでもとても可愛いのです』
と、あの冷静沈着なルイが顔を赤らめて
言う姿が今でも忘れられない。
私の中ではかなり衝撃的だったようだ。
そして初めてディアに会った時。
ポレットが居ると思った。
思わず抱きしめてしまったのだ。
私が、いや、アーサーが出会った頃のポレット
だった。確信した。
この娘はポレットの生まれ変わりだと。
抱きしめた時に薄っすらとポレットの
香りがしたのだ。忘れもしない愛しい
人の魂の香りが。
色々接触してみたのだがポレット
の記憶はなさそうだ。
残念に思ったけれど今、この同じ時代に
出会えた事が嬉しかった。
その後、ディアがポレットの生まれ変わりだ
とハッキリし、魔王討伐をしないといけない
事になった。
更にディアは異世界人だった事もある
そうだ……。異世界人!?
ポレットも変わり者だったがその魂が
異世界人と混ざり合って今のディアだと
いう。それを聞いた時にポレットらしい
と心の中で笑ってしまった。
ポレットならやりそうだな……と。
ディアはポレットとは全然違う人格だ。
ポレットの記憶は無いが異世界人の
記憶を持っている。
今のディアとなら魔王を殺せる様な気がする。
そしてきっと1000年前にポレットが何か
仕掛けていると私は推測する。
ならばその思いを無駄にはしたくないのだ。
私の愛しい人の思いを汲みたい。
出来るなら魔王討伐が終わったらディアを
妃に迎えたいと思っている。
これはポレットの面影を追っているのか
今のディアを好きになってしまったのか。
私はディアの事が可愛くて可愛くて仕方ない
のだ。ポレットには無い魅力がある。
本当は王城に閉じ込めて誰にも見せたくない。
触らせたくない。ポレットのように居なくなら
ないで欲しいのだ……。