聖女様はどこに
「ふむ。それでいくとブロスト一族
に生まれている可能性が高いのか」
ユーリ様が考え込む。
「私とかアダン殿下とかに近い年齢の
男性は親族にいません?」
「「「男性?」」」
何人かの驚く声が響いた。
「聖女様の話をしているのではない
のか?」
レオンお父様が私に訊いてきた。
「はい。聖女様です……が。あ……」
そっか!皆んな聖女様が男性だったって
知らないのか!
「聖女だもんな。女性だと思うよな〜」
サイラスが呟いた。
「違うのですか?」
ノアが驚きながらサイラスに問いかけた。
「ああ。女性に間違われるぐらい見た目だけ
女性っぽい男」
アダン殿下もうんうんと頷いている。
しーんと部屋の中が静かになる。
「ディアは知っていたのか?記憶が?
1000年前の記憶なのか!?」
アダン殿下が嬉しそうに言ってるけど
ごめんそうじゃない。
「これは……ユーリ様から聖女様の
予言書を読ませてもらって分かったの
です。ごめんなさい……」
「そ、そうか。いや、ディアが謝る事
など何も無い」
アダン殿下が眉毛を下げて申し訳なさそうに
私を見る。
「って事はブロスト家は知っていたのか?
聖女様が男性だったと」
皇帝陛下がこれまたニヤニヤしながらユーリ様
を見る。ニヒルなニヤニヤ、惚れてしまうから
止めろ。
「え?知らないよ?俺も今初めて知った。
予言書にはそのような事は一つも記されて
いない。驚きすぎてちょっと考えがまとまら
ないんだが。ディア?読んだのは本当に予言書
だった?」
「あの時、ユーリ様から直接手渡された
じゃないですか。厳重に保管している
場所から出してくれて」
ま、内容は全然予言書じゃなくただの日記
だったけどね。
「でも……あの内容は予言書って言って
いいのかって感じでしたけど。むしろ
ユーリ様があれを読んで何の予言がされて
いましたか?」
「は?何を言っているのだ?色々書かれて
いただろう?ここでは言えないが……」
ああ、そうか。一応ブロスト家の家宝だし
迂闊には言えないよね。
「私が読んだのは聖女様の日記の様なもの
でした。1000年前に女神様と知り合った
ところから始まって色々な思いが綴られて
いましたよ?」
内容は伏せるのでこのぐらいは言って
いいだろう。
「アイツの日記!?うわー!気になる!
あの異常者の日記なんて恐ろしい事しか
書いてなかったんじゃないのか?」
サイラスがブルブル震えている。
異常者って……。
聖女様ってサイコパスとかだったのかい?
女神様命!って感じではあったけども。
とりあえず私は笑って誤魔化した。